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ガタガタと震えながら、沙夜はつき子さんの姿を探す。
「つき子さん!つーきー子ーさーんー!」
大声で呼びかけてもつき子さんからの反応はない。沙夜が来た道を戻ろうとするが、何故か足が地に縫いとめられたように動かない。
「なんで?」
沙夜は足を引っ張り上げようとするが、ぴたりと止まった足は全く動こうとしない。沙夜は諦めて橋を渡ることにした。前を向くと今まで全く動かなかった足が素直に動き出す。
「何なのよ、コレ……」
1人文句を言う沙夜は前を向いて橋を渡り切った。橋を渡り切ったところでぐにゃりと周囲の景色がゆがみ、沙夜は反射的に来た道を振り返っていた。
「あっ!つき子さん!」
渡り切った一条戻橋の橋の向こう側にぼーっと立っているつき子さんの姿を認めた沙夜は再び橋を渡り、つき子さんの元へと駆け寄った。先ほどのように橋の途中で足が止まることもなく、つき子さんの傍へとたどり着く。
「もう、つき子さん、どこに行っていたの?」
「沙夜、あれ……」
傍にいなかったつき子さんへ少し不満げに声をかける沙夜に、つき子さんは目の前を指さして呆然と口を開く。沙夜はそんなつき子さんの様子につられて、つき子さんが指さす方を見ると、あんぐりと口を大きく開けた。
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