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目的のバス停に到着した沙夜とつき子さんは、スマホのメールボックスに入っている取材先の町屋カフェを巡り、午前中と同じ要領で取材を行っていく。数軒の取材を終えた頃、時刻は間もなく夕刻に差し掛かろうとしていた。沙夜は順調にアポイントを取っていた取材先の取材を終え、京都で行うスケジュールを全て終えている。
そのまま地下鉄に乗って京都駅に戻っても良かったのだが、
「ねぇ、つき子さん。取材も無事に終わって時間も余ったことだし、この辺を少し観光しよっか」
そう言ってスマホを取り出した沙夜は、近くの観光地を検索する。
「やっぱり、ここまで来たのなら御所は見ておきたいよね」
現代の京都の地図を見ながら、沙夜は近くにある御所を目指して歩き始めた。しばらく歩いていると同志社大学の向かいにある今出川御門が見え始めた。沙夜はその今出川御門の前に立つと軽く首を傾げる。
「あれ?おっかしいなぁ?」
そう言って自分のしている腕時計を見やる。そして正面にある御門を再び見上げて首を傾げた。
「どうしたんですか?沙夜」
「ん?なんかこれ、門、閉まってるよね?」
沙夜に言われたつき子さんが御門に目をやると、確かにそこには壁のような扉が閉まっていた。
「閉まっていますね」
「おかしいなぁ。まだ開門していてもいい時間なのに」
沙夜は納得がいかない様子だ。
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