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「ここは大人しく諦めて、他の所へ行きませんか?」
つき子さんの提案に沙夜はもう1度恨めしそうに御門を見上げる。どれだけ見ていても、固く閉ざされた御門が開く様子はなかった。
沙夜は深くため息をつくと、観念したように再びスマホを取り出してこの辺りの観光地を検索した。ヒットした中から沙夜が自分の知っているものを探していると、それを横から見ていたつき子さんが声を上げる。
「あ、蛤御門……」
「え?どれ?」
沙夜は突然のつき子さんの言葉に理解が追い付かない。そんな沙夜の様子につき子さんはスマホを指さして、
「これです」
そう言った。そこには確かに『蛤御門』の文字がある。
「はまぐりって読むのか、コレ」
沙夜は変なところで納得している。
「つき子さん、蛤御門に行きたいの?」
「いえ、少し気になっただけです」
つき子さんの口ぶりはいつもと少し違って妙に歯切れが悪い。沙夜はそんなつき子さんを気にしつつも再度スマホに目を落とすと、自分の知っているものがないか探した。
「あ!つき子さん。少し歩くけど、晴明神社に寄ろうよ。さすがに神社にこんな大きな門はないでしょう?」
沙夜はそう言うが、残念ながら門扉のある神社も存在する。沙夜が見つけた晴明神社にも、電動で開閉する四神門と言うのがあるのだが、沙夜もつき子さんもそのことは知らなかった。
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