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 しかし甥は少し言いよどんだ後、小さく苦笑し、言った。 「まあ、恋する男には何を言っても無駄だろう。あいつは元々熱心な記者だし、馬鹿な男じゃない。今は見守るしかないのかもしれないな」 「なんなんだ、君は」  草准は思わず呆れてつぶやく。 「いきなり来たかと思うと、不吉なことばかり言って……」  悪い、と笑って峻介は帰っていった。まったく、はた迷惑な男だと思う。  しかし……。 ――何だかもったいなくなっちまった……。  自身の目指すものとも周囲の期待とも少しばかり変わってしまったのであろう記事を前に、さらりと言ったレオの、こともなげな表情を思い出さずにはいられない。  冬の早い陽が落ちる頃、レオは帰ってきた。どうしたわけか、両手にどっさりと荷物を抱えている。 「街はすっかりクリスマスだったよ。テンションが上がって、いろいろ買いすぎちまった」  レオは楽しげに抱えていた袋から次々に荷物を取り出し、並べ始めた。小さいが本物の樅の木そっくりなツリーに、きらきらと光るたくさんのオーナメント、アドベントカレンダーに、リースやイルミネーション。あのチープな長靴に入ったお菓子まである。長く日本を離れて暮らしていた彼には懐かしいものだったのだろうが……。 「本当に、ずいぶんと買い込んだものだな」  思わず呆れてつぶやく。しかしさすがに本場の国の青年が選んだものは、クリスマス気分を盛り上げる華やかな品ばかりで、あの長靴菓子ですら洒落たものに見えてくる。 「まあ、ちょうどよかった。イブには漣たちが来るんだ。去年は慣れないながら苦労して準備したものだが、これなら大志も喜ぶだろうな」  そう続けると、レオもまた安堵したような顔になって言った。 「よかったよ。今年はあんたと過ごす初めてのクリスマスだから、ちょっとはしゃぎ過ぎちまったかと思ったが」  いや、そうぬか喜びされても困る。草准はあわてて釘をさす。 「ふたりきりじゃないぞ。さっきも言ったが、漣たちが……」 「わかってる。だから嬉しいんだ。クリスマスは家族で過ごすものだろう」
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