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 その後机に伏せてしまった草准をレオは慌てて起こし、寝室まで連れていくはめになった。  そうひどく酔っているわけでもなさそうだが、とにかく眠かったらしい。遠慮がちに腕を支えながらベッドわきまで連れていくと、レオの目の前でさっさと着物を脱ぎ、白い襦袢姿になって、ベッドにもぐりこんでしまう。  一瞬どきりとしたが、考えてみればレオには襦袢と着物の区別もつかない。そもそも、これが下着であったところで、男の下着姿なのだと自分に言い聞かせる。頭の中でぐるぐるとどうでもいい思考にとらわれているうちに、草准は寝息を立て始めた。まったく呆れるほどの遠慮のなさだ。  しかし眠りに落ちるその直前、「ありがとう、レオ」と小さく笑みを見せてくれた。  何というか……胸を小さくえぐられたような心地になって、レオは困り果てる。  しばらくの間、その場を動くことができなくなった。  草准はすでに深い眠りに落ちている。その証拠に、レオがふとそうせずにはいられなくなって、手を伸ばしてその頬にそっと触れても、ぴくりとも動かなかった。  レオの大きな手にすっぽりと収まってしまうほどの華奢な頬は、驚くほどの滑らかさで彼の武骨な掌にぴったりと吸い付いてきた。そのひんやりとした心地よさに、つい、いつまでもそうしていたいと思ってしまったのだから、レオもまたずいぶん酔っていたのかもしれない。  今夜互いに話したたくさんのことを、ぼんやりとレオは思い出していた。  人と人との距離というのは、ある時いっぺんに縮まるものなんだな……何だか不思議な気持になる。  今、誰よりも近くに感じていた。遠い場所でまったく違う人生を生きてきたはずの、この年上の芸術家のことを。  わけもなく満ち足りた気持で……、  レオもまたいつの間にか、そのまま眠ってしまっていたらしい。
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