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目覚めるとすぐ横に黒髪の頭があった。夜明けの薄闇の中、草准は目を瞬かせる。
ベッドわきの椅子に腰かけたまま、レオは草准の傍らに頭を伏せていた。
どうやらゆうべは少しばかり迷惑をかけてしまったらしい。申し訳ない思いも束の間、草准は、自分の目の前で無防備に眠るその端正な横顔に見惚れずにいられない。
折り曲げた片腕に頭を乗せ、レオは顔を横に向けて眠っていた。乱れた髪がその顔をいくらか隠していたが、それでも絵になる光景だった。
閉じた瞼に伏せられた長く濃い睫毛、すっと整った鼻梁、心持ち厚めの肉感的な唇、四角く男らしい線を描くあごの輪郭。
初めてこの男を見た時の胸の高鳴りが、心ならずも蘇る。まったく、ストレートにしておくのが惜しい男だと思う。
もっとも、ノンケだからこそ、こうして気楽に近くにいられるのかもしれないが……。
少しぐらいはいいだろうかと思い、草准はその頭に手を伸ばした。豊かな黒髪は、思いがけないほどの柔らかさで指にからみつき、彼を陶然とさせる。
誘惑に抗えず、二度、三度と髪をかき乱した。そうするとさすがに何かを感じたのか、レオは小さく身動きをした。
あわてて手を離し、何気ない風に声をかける。
「レオ、そんなところで寝てちゃいけない。僕はもう起きるから、しばらくこのベッドで眠るといい」
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