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いつになく長い射精だった。肩を上下させながら、どうにか呼吸を整えようと大きく息をついたその時……。
彼は初めて背後に人の気配を感じ、驚いて振り返った。
そして、ついさっきまで思い描いていた相手の姿をそこに認め、瞠目する。
「す…すまない……」
困惑の表情で、謝ったのはレオだった。
草准は言葉をなくし、乱れた着物を整えることも忘れて、思いもかけない侵入者をじっと見つめる。
「のぞくつもりはなかった。鍵が開いていたから、入らせてもらったんだ。そうしたら、奥から声が聞こえて来たものだから、その……身体の具合が悪いのかと思って――」
それは、とんでもない誤解だったな……そう言って笑うこともできたはずだった。男同士なのだし、相手はレオだ。こうしたことを冗談にできない間柄でもない。
なのに、わき上がる強い羞恥が、草准から言葉を奪っていた。あまりの恥ずかしさに、顔だけではなく、身体中が朱に染まるのが自分でもわかる。
そんな彼の姿から、慌てたように目を逸らし、レオは再び謝った。
「本当にすまなかった。忘れ物を取りに来たんだけど……また、出直すよ」
「カメラのフィルムなら……台所の机の上だ…」
半ば呆然としたまま、ようやく口を開いて草准は言った。立ち去ろうとしていたレオは、少し虚を突かれた顔で彼を見たが、再び困ったように視線をはずした。
「わ、わかった……ありがとう」
玄関の鍵だけは、すぐ閉めておいた方がいい…そう言い残して、彼は姿を消した。
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