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玄関の電気は消えていた。草准宅の呼び鈴は壊れていて用をなさず、いつでも勝手に入ってきていいと言われていたから、ためしに引き戸を動かしてみると、昼間と同じく鍵は開いていた。
「無用心だな…」とつぶやきながら中に入る。
そうして、暗闇の中から途切れ途切れに聞こえて来る、苦しげな声を聞いたのだ。
血相を変えて廊下を走り、声のする方へと向かう。扉の開いた寝室を覗き込み、「草准! 大丈夫か?」と押し殺した声で尋ねたが、その声は彼に聞こえていないようだった。
まずいところへ来てしまったらしい、そうレオが悟ったのは、その時だ。
月の光が、濃い紺色の着物からこぼれ出る眩しいほどに白い肌を、鮮やかに照らし出していた。
草准は入り口に背を向けて座っていたが、心持ち斜めを向いていたので、細く白い手の中で形を変えるピンク色の胸の尖りや、先走りに濡れて光る固く立ち上がったものが、ときおり、見え隠れする。
柔らかく反らされた喉、つややかに濡れた唇。そこから途切れ途切れに漏れ出る声や吐息が、鼓膜を怪しく刺激する。
嫌悪感など微塵もなかった。ショックだった。草准のそんな姿を見てしまったことが……ではなく、その光景に激しくひきつけられてしまったことが。
自分のものがわずかに質量をもち始めていることに気付き、レオは焦った。早く立ち去らなくては……そう思うのに足が動かない。
やがて草准が片膝を立てて柔らかな内腿を晒し、扇情的に身体をくねらせて、耳をふさぎたくなるほど艶やかな声と共に果てるまで、もしかすると、息をすることすら忘れていたかもしれない。
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