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翌朝、声をかける前に起きて来た私に、ママはちょっと驚いたような顔をした。
「はやいのね、どうかした?」
「ううん、目が覚めただけ」
ママはいつもと同じように見えた。パパもそう。いつもどおり、朝ご飯を食べている。昨夜のことが悪い夢だったように思える。
でも、パパもママも、目を合わせないようにしているのがわかる。不自然なくせに。
「あら、なんか、目が腫れてない? 熱でもある?」
ママが私の顔を覗き込んで、首を傾げる。私の額に触れた手は、水仕事を終えたあとだから、少し冷たい。
「熱とかないよ。大丈夫」
「そう?」
ならいいけど、とママが言う。
ねえ、ママこそ大丈夫? 昨日パパにあんなこと言われてたけど、大丈夫? そう言いたい気持ちを必死に抑える。
私が聞いていたこと、バレちゃいけない。そう思う。
前、ユリナが言っていた。夫婦喧嘩を見られたって知ると、さらに影で悪化するって。あんたのせいでばれた! ってややっこしいことになるって。だから、知らんぷりすべきだよ、なんて。
そうじゃなくても、私は見ていたことを二人に告げて、その後どうしたらいいのかわからない。だから、知らんふりをする。
ねえ、ユリナ。だってこれ、普通の夫婦喧嘩だったら、結構末期な部類だと思わない? 離婚目前、だよね。
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