生徒会長誕生

8/9
前へ
/257ページ
次へ
時を刻む音がする。 静かな執務室にただ一人。 扉に鍵をかけ椅子に座り直し 漸く眼鏡を机に置いた。 授業を教室か此処執務室で受けるかは 自由に選ぶことが出来る。 ただし、その権限を行使できるのは生徒会長のみ。 所謂“会長特権”と呼ばれる一つだ。 そもそもこの制度は昔からあった訳ではなく、 僕が生徒会長になるにあたって 急遽取付けたもので、 それを半ば強引に通したのは 前の会長である竜胆だった。 全ては自分の為でなく、 次期会長として僕を据えるための 布石で用意された。 その為、一学期の殆どを休学していた僕は、 ほぼ自分の教室に足を運んだ記憶がない。 教師ですら僕の姿を直に見たことのある人は ほぼいないだろう。 ここは教師より生徒の……その後ろ盾の影響力がものを言う世界。 建前は兎も角、先生と生徒の力関係など言うまでもない。 生徒が望まないことはこの学園では決して行われない。 此処では体育祭や文化祭等 何かを皆と協力して行うなど 集団を嫌う子息達に向かないものは 極力排除されていている。 そして、その力関係は無論生徒同士の中でも適応される。 つまりはスクールカーストの頂に近い者ほど 自由に自治権を行使できるという理屈だ。 それ故、教室であろうと なかろうと授業さえ受けていれば 特別支障なく学園生活を送れている。 ……だからこそ、このような特殊な制度が まかり通る要因となっている訳だが…… 「…………ふ」 またこの生活を繰り返すのかと思うと 出る溜息はどうしても大きくなってしまう。 コレを楽だから良いと思う者は 少なからずいるとして、 その為にわざわざ会長になろうとまで 思うそんな奇特な人間が この学園に果たしているだろうか。 僕も……その一人に違いないというのに。 ============ >Pさん ありがとうございます、よくするミスです(-_-;) ご指摘助かります。
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!

437人が本棚に入れています
本棚に追加