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今日こそはちくちく言ってやろう、それで疎まれても知るもんか。
そう思い定めて手を動かしていると、郵便物の中に見慣れた文字で書かれた自分の名前を見つけてしまう。
わざわざ自宅宛てに郵送されたポストカード。
「Happy 3rd Anniversary!
去年はまるっと忘れていたあなたですが、今年は大丈夫ですよね?(笑)
結婚3周年は花婚式というらしいです。
これからもフツーによろしく」
息を飲んで読み返している間にチャイムが鳴り、インターフォンのモニターに目をやると、色とりどりの花束が画面を覆い尽くしている。
初老の配達員からずっしりと持ち重りのするそれを受け取り、シヤチハタで捺印し、ドアを閉め、慌てて花瓶を探す。
自分では花の世話なんてしないくせに、ずるくない? ねえ、やっぱりずるくない?
ミルク色のハンドバッグに財布を放りこみ、サンダルを突っかけ、わたしはあたふたと近所の洋菓子屋へ走る。
花をモチーフにしたケーキか何かあるといいな、と思いながら。
【完】
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