25人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ、又会える日の君を楽しみにしてるよ」
「はい、ありがとうございます」
僕は大きな力を貰った気がした。
ただ、まだ3年半って何故大社長がこんなバイトの事を知っているのだろう?と不思議だった。やっぱりシフトで迷惑かけ放題だから報告が上がってしまっているのかと。不安になったが、さっきの笑顔は怒ってなさそうだ。 やっぱり一代でこれだけ店を大きくし、広げた人は器が違う。
僕は又暗闇の中一人になった。でもさっきまでの絶望感は消えていた。
もう一度頑張ろう!と思って星空を見上げた時、街の明かりが一斉につき、ビルの下の道路から歓声の様な声が上がっていた。
又オーディションとネタ作りの日々。相変わらず無下に扱われる日々。
ただ何だか前と違う、大社長に会ってから、あの方だって順風満帆に来たわけではないだろう。苦労してきたんだろう。
あの温かい穏やかな語り口が物語っている。それに比べりゃ自分はまだ3年半、まだまだだ…。
ある日オーディションからそのまま職場に行った。若社長が声をかけてきた。
「勇斗君、今日はもう事務所からの呼び出しないよね?出掛けたいんだけど手伝ってくれない?」
「えっ?僕でいいんですか?」
「そう、君がいいの」
準備を手伝い車で同行をした。研修で習った事。運転手付きの場合、自分は助手席だよなと思いだし助手席に乗ろうとした。
「話しが遠くなるから後ろに乗れよ」
緊張しながら若社長の隣に乗った
「芸人の方はどう?」
「全然駄目です。諦めてはないですけどめげますね」
「そうなんだぁ~、じゃあお母さんも心配してるだろう?お母さんは元気なの?」
「はい、元気です。」
「ひとり離れた場所から応援してくれてるんだね?」
「はい…父の事は聞かないんですか?だいたいお父さんは?ってセットで聞かれて来たもんで」
「履歴書でわかってるよ」
「あっ、そうですよね。でも聞かれても俺、全然知らないんです。戸籍にも書いてない」
「そうなんだ、お母さん凄いね。君みたいにちゃんとした青年に育てあげて」
「はい、感謝してます」
「俺ね、この会社デカくしたい、繊維だけじゃなく手芸用品も扱ってもっと店舗数増やして行きたい。それでね勇斗君、手伝ってくれないか?」
「えっ?僕がですか?」
「そう、勿論勇斗君の夢は応援する。ビックになったらそれは嬉しい。でも誰とバディを組むかってなったら君しか浮かばなかったんだ。ストレスなく一緒に出来そうな人だなって、やってくれるかな?」
「社長って孤独な立場みたいですよね?」
「そうだね、プライベートでも子供は出来ないし…でも妻は愛してるよ。仕事は別だからね。仕事のパートナーが必要なんだ」
「わかりました、出来る範囲でしか出来ませんがお手伝いします」
僕は大社長の時の様に社長の言葉がすうっと頭に入って来るのがわかった。直感に頼ろう!この人なら信頼出来る。自然とそう思えた。
最初のコメントを投稿しよう!