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母
勇斗は美智代に連絡をした。
オーディションに受かった事、職場のみんなが自分の事の様に喜んでくれた事。
それが受かった事より嬉しく心を打たれた事。
「そう、良かった…本当に良かった」
美智代は震えた声で振り絞る様に続けた。
「浮かれるんじゃないよ、これからだよ」
「わかってる、チャンスを貰った、これからだと思ってる」
美智代はその夜一人満天の星が降る九十九里浜にいた。そして星空を見て言った。
「勇斗、沢山の星が煌めくから星空は綺麗なの、それがわかってくれたかな?」
涙で星が滲んだ。
その時美智代のスマホのメール着信音が鳴った。
「美智代、いい青年に育ててくれてありがとう」
美智代は泣き崩れた。
無我夢中だった25年間、この一本のメールで全てが報われた。
美智代の泣き声と、九十九里の波の音を満天の星空が聞いていた。
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