番外編 星祭り

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  ************ 「なんで、ここにいるんだ?」 「ええと⋯⋯、ええと!?」  広い稽古場の真ん中。一人で座っているリアンの膝の上にいるのが、なぜかなんて。  ロエルにも、わかるはずがなかった。 「最近、ただ働きばかりで、疲れてるんだろうか。ロエルが空中から現れたように見えたんだが」  真剣な顔でリアンがぶつぶつと呟く。  ──ただ働きなのは、カザル兄さんとの約束のせいだ⋯⋯。 「本物なのか?」  ぺたぺた、さすさすと頬に触られる。  ロエルは、真っ赤になって頷いた。  リアンの膝から降りようとしたが、腰をしっかりとつかまれて離してもらえない。 「えっと⋯⋯リアン」 「なに?」  優しく見つめられて、どきんと胸が鳴る。 「また、星餅作ったら⋯⋯食べてくれる?」 「もちろんだ」  満面の笑みがあふれた。  リアンの温かい腕がロエルの背中に回り、唇がそっと重ねられた。  ロエルの体には、きらきらと小さな星の雫が光っていたが、二人は気づかなかった。  ************  青年は、ほっと息をついた。  彼の星餅を捧げると、河の神は大層喜ばれた。  近年稀にみる、純粋な想いの結晶らしい。  大盤振る舞いで星々の河は見事に流れ、光の橋も架かった。  数年ぶりの恋人たちの逢瀬に天上は大宴会。  地上にも、たくさんの幸がまかれたことだろう。  彼は、御礼の星飴を喜んでくれただろうか。  きらりと光る星々を見ながら幸運を祈る。  今年は運が良かった。だが、来年はまたどうなるやら。 「ああ、管理人も楽じゃない⋯⋯」  そんな呟きは、さらさらと流れる星々の中に消えていった。
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