01 僕の生きる意味

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2012年06月09日 美穂は仕事が忙しいらしく今日は朝早くに出て行った。 仕事と俺とどっちが大事なの? とかは、思わないし言ったりもしない。 美穂が出て行くと同時に小さな女の子が俺の部屋に訪れた。 歩ちゃんだ。 「おはよー  遊びに来たよー」 歩ちゃんは、そう言って俺のベッドの隣に置いてある椅子に座った。 「おはよう」 「こんなところに来たら、怒られるかも知れないぞ?」 「平気だよー  今日は、授業の日だから、それまでは自由なの」 「そうなのか?」 「それより……  さっきの人って、彼女?  物凄く綺麗な人だったね!」 「彼女じゃないぞ?  まぁ、同棲はしているがな……」 「結婚しないの?」 何故か、その言葉がぐさりと胸に刺さる。 「しないよ」 「ふーん」 「大人には、色々あるのさ」 「あ、そだそだ。  お兄さんも暇なら授業に遊びに来てよ」 子供って話が飛ぶことが多いよな。 でも、まぁ、合わせるか…… だから、どうして話が飛ぶ? 「授業?」 「うん。  お友達がいっぱいで楽しいよー」 「気が向いたらいくよ」 「絶対だよ?  じゃ、私は授業に行くねー」 歩ちゃんはそう言うと俺の部屋を出て行った。 また、入れ替わるように看護婦さんが入って来た。 「ずいぶん懐かれたわね」 看護婦さんは、そう言いながら慣れた手つきで俺の腕に点滴を打った。 「痛い……」 「どうして痛いかわかる?」 「貴方の腕が……」 俺が、そこまで言いかけた時、看護婦さんの眉が、ピクリと動いた。 だから、俺は、訂正した。 「じゃなくて、生きてるからです」 「はい、よくできました」 看護婦さんは、ニッコリと笑う。 「明日辺り、病院の庭を散歩してみたらどうかしら?」 「散歩?」 「少しは動かないと運動不足になるからね……」 そうだな。 明日、少し歩くか……
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