色をまとう-Prologue

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色をまとう-Prologue

──中身がない人ほどね、必死になって見た目を飾り立てるものなのよ。だからあなたは見た目なんかにかまけてないで、中身をきちんと身につけなさい…… 幾度となく耳にした母の言葉がよみがえる。 私はずっと、それを信じて──あるいは真に受けて──生きてきた。 「カワイイ」だの「キレイ」だのといった形容とは無縁の容姿を持って生まれた以上、「中身で勝負!」は避けられない。 だから「内面を磨きなさい」という教えは間違っていなかったと思う。 ──でも。 すれ違った誰もが思わず振り返るレベルの美貌を持ちながら、恐ろしく優秀でもある人間というのが、この世には存在するのだ。 この世どころか、同じ会社の、同じ部署にさえも。
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