加護の本領発揮

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加護の本領発揮

私は冒険者登録する前に掲示板に貼られている依頼書を確認する事にしました。この街で最も必要とされているのが神官では無い可能性もあるからです。 パーティメンバーとしては必要不可欠かもしれませんが、私は争い事を極力避けて通りたいと思っています。 勇者様に選ばれたのであれば、争いに巻き込まれたとしてもきっと私の事を身を呈して守ってくださる事でしょう。しかし、勇者のなり損ないでは私を守る何処ろか足手纏いとして置き去りにされかねません。 運動神経の良い神官であれば自ら身を守り、置き去りにされる事なく一緒に逃げ果せるかもしれませんが、私の脚力は腕白な少年のかけ足にも及ばないほど、筋力は鉄の剣を両手で持ち上げられない位に貧弱です。 予想していた事でしが、やはり求めているのはパーティメンバーで神官による癒しの力を求めている様です。 傷ついた身体を使い切りの薬草やポーション等のお金がかかるし嵩張るアイテムで回復させるよりも、魔力が続く限り何度で行使出来る癒しの力を必要とするのは至極当然と言えるでしょう。 此処で冒険者登録するのは諦めて、次の街に移った方が良さそうです。踵を返して入り口から外に出ようとした時でした。男だらけでむさ苦しい連中が、ニヤニヤ顔を隠そうともせずに私の前に立ちはだかりました。 「おいおい、未だ来たばかりで直ぐに帰るなんてもったいねえ事すんなよ。オレ達と夜まで語り合おうじゃんよ。そのままパーティメンバーとして加わっても良いんだぜ?」 「お断りします。私は街の人達が神官の力を必要としていないか確認に来ただけですので、冒険者登録もしておりません。パーティメンバーには勿論、アナタ方とこれ以上お付き合いする事も有りません」 「おっと、ツレナイ事言うなよ。せめて名前だけでもせめて名前だけでも教えてくれても良いんじゃねえのか?」 男が私の肩に触れようとしたその時、見えない膜の様なものが私を包んでいたのか、バチンと反発するかの様な音と共に男の手が強く弾き飛ばされ、蹌踉めきました。 「な、何だこれは!?」 『不浄な輩が其方に触れようとした様だな。安心せよ、我の加護有る限り心を許した者でなければ指一本触れる事叶わん』 頭の中に神様の声が聞こえてきました。まるで私の事を凄く近くで見守っていてくださったかの様です。 (神様、私が祈りを捧げて居なくともお声をかけてくださるのですか?) 『其方以外に話し相手がおらん。信者が沢山いる神なら忙し過ぎて一々1人の事を見続けられぬだろうが、我は悠久の暇を持て余して居た程よ』 神様の力は信仰によって更なる高みに至ると言われておりましたが、私一人の信仰ですらこれ程の加護の力を発揮させられるとは・・・。もしやピンポイントで加護を得ている私の独り占め状態だからでしょうか? 身の安全は保障されたかもしれませんが、代わりに皆から遠巻きに見られる様になりました。触らぬ神に祟りなしという事でしょう。けれども私は神官ですよー。
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