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加護の使い道
今私は馬車の中で二人の少女達と共に、街道から外れた道で揺られています。
何故街道から外れているのかと言うと、馬車が盗賊に襲われたからです。他に乗っていた人達は人質として別々にさせられています。
それは数時間前の出来事でした。
街中で神官の需要が無かったので、となり村で怪我人が居る事を偶々街に出稼ぎに来ていた村人が話していたのを耳にした為、乗り合い馬車に乗り込み村に向かう途中の事。
馬車の中には親子や商人、出稼ぎから帰る村人が乗っていました。
親子は父1人と姉妹2人、村から買い出し序でに誕生祝いのアクセサリーを買って貰った妹が馬車の中で姉と仲良く話し込んでいました。
母が居なかったのは身重で街に行けなかったからだった様で、お土産のお菓子を早く食べさせてあげたいなと語り合っていました。
街から離れて幾ばくかの時がたった頃、護衛をしていた冒険者の方達が馬車を止めるように言ってきました。
「盗賊だ! 身を屈めて外には出ない様に」
私達は言われた通りにして、外の様子を伺うこと無く大人しくしていました。暫くして、喧騒が無くなり誰かが馬車に入ってきました。
「護衛は全て片付けた。死にたくなければ1人ずつ馬車から降りろ」
格好からして、いかにも盗賊風の顔に傷を付けた無精髭の漢でした。
村人が最初に外に出て、続いて商人、父の順でした。残っていた私と姉妹の女だけになった際に、盗賊の漢が出口を塞ぎました。
「ガキ2人は子分どもにやるとして、良い女が紛れ込んでるじゃねえか。帰る前に味見するか」
舌舐りしながら私に近付く漢。伸ばした手が胸元に触れようとした所で加護の力で手が弾かれました。
「どうなってやがる!?」
何度も触れようとしますが、結果は変わらず。とうとう諦めたのか、矛先を姉妹に向けようとした事に気付いた私は、ふと神様が言っていた事を思い出しました。
姉妹に対して私は心を許して自ら触れ、腕の中に抱きました。すると、漢が私に触れない様、姉妹に手を伸ばしましたが、バチンと弾かれました。
こうして盗賊に襲われ、護衛の冒険者の方達が犠牲になってしまいましたが、馬車に乗っていた人達は人質として生かされる事となり、盗賊に馬車ごと連れ去られてしまいました。
「着いたぞ。人質を殺されたくなければ、馬車から降りて来い」
私達に触れられない為、自発的に降りる様脅してきたので、手を繋ぎながら大人しく言う通りにしました。
外に出てみれば、周りは舗装された岩肌に囲まれた洞窟の中だと解りました。使い古された灯りが此処彼処に吊るされており、どうやら鉱山跡地の様でした。
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