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帰り道の特に暗い所で、少し急な坂となっている道があった。
先輩が見守る中で私は真っ暗な空間を歩いてた。
その時、道に転がっていた少し大きめの石に足を取られてしまった。
「奈月ちゃん!?」
「っ!」
私は、そのまま何メートルか転がり落ちてしまう。
そしてその時に、軽く頭を打ってしまった。
「おい!大丈夫か!」
他の先輩も私の方に向かってくる。
いや、違うのだ。
痛む頭を押さえながらかすかに目を開くと、先輩がこちらに来る姿が見えた。
懐中電灯の灯りがぼんやりと、暗闇の中でも見えたのだ。
ぼんやりというのは頭の痛さからまだ目が半開きであることが原因だ。
しかし、
「み……みえる」
「大丈夫か!?頭打ったか!俺たちはわかるか?」
先輩たちが必死に話しかけてくるが、私には届かない。
なぜなら、見えるから。私の顔を照らす眩しい懐中電灯の閃光がここまで温かく、ここまで嬉しいと感じるのは今この瞬間は私だけだろう。
「もしかして……」
心配する先輩たちの声を差し置いて、私の頭の中にはある可能性が浮かび上がった。
「すみません、大丈夫です。」
「お、おう。それならいいのだが」
今しかない――。
私はすぐに立ち上がって、来た道を戻り始めた。
「ちょっとまて!どこいく……」
「行かせてあげよう。あとはわたしが面倒見るから」
他の先輩たちが混乱し始める中、事情を知っている先輩は私に何が起こったのかわかったようだ。
「任せて」と私の後を追う。だが、全力ではない。ゆっくりとゆっくりと……。
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