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2020年 某日
── 僕のことを、話してみようかと思う。
と言っても、たいして面白い話じゃない。
これは僕の恋……それも中学の時の、実らなかった初恋に関する話だ。
ね、普通の話だろ?
みんな、恋のひとつやふたつ経験して、大人になっていくもんだ。
失恋も、数えきれない程経験するだろう。
異世界転生でもなければ、お姫様と無事結ばれてゴールインするような話でもない。
今や中学生どころか、立派な中高年世代に差し掛かった、たいして特徴のない、何処にでも居るような普通の男の話……。
ボーイミーツガール? って言うんだっけ。
こういう話。よく知らないけど。
ハッキリ言って面白く無いかも知れない。
ああ、先に断っておくよ。
これを読んでいて、人によっては気持ちが悪いと感じる部分があるかも知れない。
夢みたいな話でも、それがかならずしも綺麗なモノとは限らないのだから。
そう夢。
本当言うと、この記憶のことを、僕は夢だったんじゃないかと今でも時々思う。
でも、あの15歳の夏に起きたことは、不思議な体験だったけど確かに現実で。
海底に枝を広げる、緑の大樹。
繰り返す波の音と、深夜の生温い海風。
この話は、あの日僕が出会った
── 星の樹の唄を歌う少女との話だ。
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