2020年 某日

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

2020年 某日

── 僕のことを、話してみようかと思う。 と言っても、たいして面白い話じゃない。 これは僕の恋……それも中学の時の、実らなかった初恋に関する話だ。 ね、普通の話だろ? みんな、恋のひとつやふたつ経験して、大人になっていくもんだ。 失恋も、数えきれない程経験するだろう。 異世界転生でもなければ、お姫様と無事結ばれてゴールインするような話でもない。 今や中学生どころか、立派な中高年世代に差し掛かった、たいして特徴のない、何処にでも居るような普通の男の話……。 ボーイミーツガール? って言うんだっけ。 こういう話。よく知らないけど。 ハッキリ言って面白く無いかも知れない。 ああ、先に断っておくよ。 これを読んでいて、人によっては気持ちが悪いと感じる部分があるかも知れない。 夢みたいな話でも、それがかならずしも綺麗なモノとは限らないのだから。 そう夢。 本当言うと、この記憶のことを、僕は夢だったんじゃないかと今でも時々思う。 でも、あの15歳の夏に起きたことは、不思議な体験だったけど確かに現実で。 海底に枝を広げる、緑の大樹。 繰り返す波の音と、深夜の生温い海風。 この話は、あの日僕が出会った ── 星の樹の唄を歌う少女との話だ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!