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こくり、とアンヘルの喉が鳴った。柄にもなく緊張しているようだと自身を嘲笑い、気持ちを昂らせる。
(自分の力を試すことに対して緊張するのは、数百年生きてきて初めての経験だ……だが)
「そんな緊張する必要は無かったか」
アンヘルがそうぼやくと、無音で周囲の魔素が動いた。彼女の思い描いた通りに、複数の拳大程の小さな集まりが出来てゆく。彼女の周りを囲む球体状の魔素の塊。
それらはすぐに眩い光となって飛び散り、視界を白で埋めつくした。空間全体に広がると、眩しかった光は徐々に目が痛くないよう落ち着いた光へと変わる。数秒後には全て光球となり、アンヘルの周りを漂っていた。
視界を塞いでいた闇は消え失せ、その場に立つアンヘルの姿が現れると同時に、今まで見えなかった空間の様子が顕になる。
言わずもがな、成功だ。
その様子を見て、アンヘルは思わず口角が上がってしまう。どっどっと胸が高鳴るのが聞こえてくる。緊張が解けたからか、思わず乾いた笑いが漏れた。
「はは、は……間違いない、復活したのだ。私は」
魔族を率いて頂点に立つ魔王に。──かつての自分に。
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