1.目覚め

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 魔族には他種族に無い特徴がある。  他種族は──精霊の力を借りるエルフ族や体内で魔力を生成する(ドラゴン)族などの特殊な種族を除いて──、一般的には、空気中に無限に存在する〝魔素〟という存在を体内で魔力へと変換し、可能範囲内での座標の指定と詠唱文による魔法の構築とを経て、魔法が発動する。  しかし魔族はこの過程内での〝詠唱文による〟魔法の構築が必要ないのである。要するに脳内のイメージだけで魔法を発動出来る、ということだ。  理由はいくつか考えられるが、一番大きいのはやはり魔素との親和性の高さだろう。他種族に比べ、魔素から魔力への変換スピードも速く、体内で保有可能な魔力も多い。……尤も、(ドラゴン)などの高位種族には劣るが。  だが、その高位種族に匹敵、もしくは上回る程の力を持つ魔族がいる。それが王族──魔王の直系だ。  王族は魔族とはまた別の種族だと思った方が早い。高位種族のように特殊特性(ユニーク)を複数持ち、意識のみで魔素を自在に操る種族を、一般の魔族と同等とは誰も考えないだろう。当然、魔法の幅や魔力保有量の差から見ても別格の存在である。  まずアンヘルが試したのは、意識のみで魔素を操る基本的な動作だ。霧のように空気中に漂う魔素は、目でも脳でも問題なく認識出来ている。これは魔族のみが持つ特徴の1つだが、問題なく行えていることから、現在の自身の種族は魔族で確定した。  一先ず安心したアンヘルは、ほっと息をつく。何事もなく目覚めたとはいえ、元通りに復活したと考えるのはまだ早い。  次にアンヘルは、認識した魔素に意識を向ける。この魔素を意思のみで操ることが出来れば、無事魔王としての復活を果たせたと言えるのだが──……。
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