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高揚感が収まり落ち着いたアンヘルが真っ先に考えたのは、転生者という存在だった。思い出しては強く唇を噛む。
人間とは思えぬ程の強大な力、神などという不確かなモノの加護を受け何もかも破壊していった存在、そして最後の最後で受けた謎の硬直。
仲間を殺られたのは当然悔しいが、それよりも原因もわからずに死んでしまった自身にも怒りを覚える、もちろん転生者も同様──いやそれ以上に憎々しい。理不尽な正義を唱え、一方的に蹂躙されたのだから。
アンヘルの心の内にどす黒い感情が渦巻く。──彼女が復讐を誓うのは自然な流れだった。
「……今度こそは」
しん、と静まり返っていた空間に、その一言だけが重々しく響く。鋭い視線を放つアンヘルの瞳は、魔族の象徴である紅に輝いていた。
(あの戦いで魔族の数は減ったが、逃げ延びたやつもいるだろう。魔王である私が復活した今、すぐにでも探しに行かねば……)
今は、云わば崩された体勢を立て直さなければいけないが、1人でも同族がいればまだ希望は持てる。他種族から孤立した種族である魔族が、他者に助けを求めたところで応じてくれる種族は少ないだろう。
もちろん、もし同族がいなければ──……という可能性を考える必要もある。茨が生い茂る道になるだろうが、その時はその時だ。
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