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「美波ちゃんは、腕がこうなるから、」
「はい」
先輩たちは本当に優しくて、僕にほとんど付きっきりになることもあった。
全寮制男子校という閉鎖的な空間で、みんな先輩たちにただの憧れ以上の気持ちを抱いている。
僕はそんな事知らなかった。
だって中等部一年生の僕は、学校を卒業したらいつか女の子と付き合うんだとぼんやり思っていたんだから。男の相手が男だなんてことは、頭の隅にも無かった。
同級生は先輩の手前、仲良くしてはいてくれたけど、本当は先輩に気に入られている僕のことをよく思ってはいなかった。
それに気が付いたのは、あの事があった後のこと。
***
「美波ちゃん、ちょっと居残り出来る?」
「はい、大丈夫です」
「ちょっと聞きたい事があるんだ」
通常のメニューをこなして解散した後僕を呼び止めたのは、いつも優しくしてくれる先輩だった。
プールサイドに先輩とベンチに並んで座った。4人の先輩はみんな三年生で、同じ中等部の生徒だとは思えないほど体が大きくてしっかりしている。
速く泳ぐ事に執着している訳じゃないけど、どんなに長く水の中にいても疲れなさそうな先輩たちの体が羨ましいな、なんて呑気に考えていた。
「やっぱりそうなんだ? 物欲しそうな顔して、やらしい奴」
「えっ」
先輩が言った言葉も、肩に回された腕の意味も、僕には分からなかった。
だから突然先輩の顔が近づいて来てただ驚いた。
「ふっ、や、ん」
何が起こったのか全く分からなかった。
ただ何かが口の中で動き回っていて凄く気持ち悪かった。それが何だか分かった時、僕は先輩の肩を手で押し返した。
「どうしたの? 美波ちゃん」
僕の両手首をがっちりと捕まえて先輩は笑った。
その笑い方がいつもの先輩とは違って、怖くなった僕は助けを求めようと他の先輩たちを振り返った。
「大丈夫だよ、気持ちいいこと知りたいんだよね? ちゃんと教えてあげるから」
他の先輩たちも僕の背中や胸に手を伸ばして来る。
瞬間、背筋が寒くなった。
「や、いやっ」
男と男がどうなるなんて分からなくても、体の上を勝手に這う手が嫌で、僕は身をよじった。
「おかしいな~一年生が教えてくれたんだよ、美波はこういうことが大好きだって」
「み、んなっ、て」
ベンチに押し倒されて、上半身を好きに撫で回されながら、信じられない言葉に耳を疑った。
「美波ちゃんはエッチな子だから、僕らに気持ちよくしてほしいんだよね?」
「違っ、そんなこと言ってなっ」
いくら暴れても、体格で負けている上に4人もいる先輩たちには通用しない。
それどころか、僕が暴れて逃げようとするほど、先輩たちは楽しげに笑って目を輝かせていた。
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