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目が覚めたら、青い空が見えた。
なにが起きたのか正確にはわからないけれど、たぶん交通事故にでも巻き込まれたんだろう。すごい音だったし、追突でもされたのかな。
その割には、どこも痛くない。
もしかしたら、僕は死んだのかもしれない。
「ここは……?」
その場に寝転んだまま、きょろきょろとあたりを見回す。場所は、日本橋で間違いなさそうだった。「日本橋」と確かに書いてあるし、すぐ隣に麒麟の像だってある。三途の川じゃなくてよかった。
唯一おかしいのは空が見えることだ。そう、首都高速道路が、ない。
いや、ないわけではない。左側と右側には、ある。日本橋の真上にだけ、ぽっかりと、ない。
「おい、大丈夫か?」
声をかけられて見上げると、なんとなく見たことがあるような風貌の男が立っていた。学校の体操着のようなものを着ている。たぶん、同い年か少し上くらいだろう。
どこで見たんだろう、でも、なんとなくダサい恰好だなあ、よくそれで町を歩けるなあ、なんて若干失礼なことを思いながら、僕は差し出された彼の腕を取り、立ち上がった。どうやら、僕は本当に無傷のようだ。
「父さんは?車は?やっぱり事故ったの?」
僕は状況が飲み込めずにあたりを見回したが、すぐに様子がおかしいことに気づいた。
車が、なんとなく、古い。レトロといえば聞こえがいいが、「エコ?何それおいしいの?」とでも言わんばかりに排気ガスをもくもく出しながら、たくさんの車が道路を埋め尽くしている。大渋滞だ。
「事故?なんのことだ?この渋滞で事故なんかおきないよ。もしかして、頭を打って、混乱してるのか?」
僕は「いや……」と否定した。そして、視界にあるものが飛び込んできた。
「TOKYO 1964……?」
それは、近くの建物に貼られた大きなポスターだった。
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