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第三章 ~淫靡な快楽に溺れて~
深い眠りから目を覚ましたロザリアは、自身が何も身につけていないことに気付く。
(どうしてこんな――!?)
今まで一度もこんな格好で眠ったことなどない。
あまりにもふしだらな姿に、思わず驚いて絶句するロザリアだったが、すぐに昨夜の出来事を思い出して頬を赤らめる。
ヘルムートと名乗る魔族の男に連れ去られ、淫らに体を愛撫された挙句に純潔まで散らされたのだ。
こともあろうかロザリアは、ヘルムートに触れられて甘い愉悦を覚え、いやらしい嬌声まで上げて彼を求めてしまった。
(あれも全部、夢だったら良かったのに……)
そう思う一方でどういうわけか、ヘルムートに対して憎しみの感情は湧いてこなかった。
だからといって、これ以上ここに留まるつもりは毛頭ない。
たとえ危害を加えられずとも、あんな風に淫らに触れられ続けたら、こちらの身が持たなくなるのは必至だ。
それに、あの男に情が移って、後戻りできなくなるようなことは避けたい。
――ヘルムートがいない今なら逃げられるかもしれない。
ロザリアはベッドから起き上がろうとするも、昨夜の情交のせいか体が重く足の間に痛みが走る。
思うように動けずにいると、ヘルムートが戻ってきてしまい慌てて裸を隠す。
風呂上がりらしくバスローブを着ており、長い黒髪は少し濡れていた。
その姿もどことなく色気があり、ついヘルムートに見惚れてしまうのだった。
「もう起きたのか。おはよう、ロザリア」
「お、おはよう……」
逃げようと考えた後ろめたさから、ロザリアはぎこちなく挨拶を返した。
するとヘルムートはベッドに腰を下ろし、こちらにぐいと体を近づけてくる。
(もしかして、キスされる!?)
心の準備もできておらず、ロザリアは激しく狼狽するものの、彼はただやんわりと微笑んで髪を撫でるだけだった。
「どうだ? よく眠れたか?」
「ええ、おかげさまで……」
体調を気遣われて面喰いつつも、ロザリアは正直に答えた。
「そいつは良かった。そうだ、せっかく起きたんだからシャワーでも浴びてこいよ。昨夜はあのまま寝ちまったから、汗ばんでて気持ち悪いだろう?」
「ええ、そうね……」
ヘルムートの言う通り、昨夜は初めて抱かれた影響で疲れ切って、あのまま眠ってしまったのだ。
汗を流せばすっきりするだろうし、何より体を温めて血流を良くしたい。
だが、立ち上がろうとしたところで足の間に痛みが走り、ロザリアはたまらず顔をしかめる。
その様子を見たヘルムートは、至極申し訳なさそうな面持ちを浮かべた。
「初めてだったってのに、昨夜は無理させて本当に悪かったな……」
「い、いえ……別に……」
傲慢な彼がそんな風に謝罪するとは思わず、ロザリアは返す言葉に困ってしまう。
すると次の瞬間、彼女の体がふわりと浮かび、そのままヘルムートの腕に抱き上げられた。
「ちょっと、何するの!? 下ろして!」
裸のまま横抱きにされた恥ずかしさから、ロザリアはどうにか下ろしてもらおうとじたばたする。
「暴れるな。このまま浴室まで連れてってやるから、大人しくしてろ」
「だったら、せめて下着ぐらい着せてよ!」
「もうとっくに見せてるんだから、今更気にするなよ。それに、今夜またお前を抱くんだから今見られようと同じだろう?」
「じょ、冗談じゃないわ! 今夜もあなたに抱かれるなんて――」
その後も抵抗を続けるロザリアだったが、その甲斐も虚しく浴室まで運ばれる羽目になった。
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