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Ⅰ.喋ってはいけない
地元で有名な心霊スポットがある。
『ルート××』を通っていくと市街地から鬱蒼と繁った森の中へと入っていく。途中にある細い脇道を曲がって行くと、森の中に廃墟の屋敷が見える。
妖精の悪戯のように森の中に突如として現れる。まるで森をくり貫いたイメージだ。
蔦が張った門の前に一台のバンが停まる。
エンジンが切られ、ヘッドライトが消えると完全な暗闇が訪れる。
「くれぇなぁ……まだ夜の九時を回った程度だぞ」
助手席から降りてきた痩せた男が愚痴を溢す。その目は若干眠たそうに垂れている。
後部座席のドアが開き、薄水色のスーツを来た女性が降りてきた。持っている懐中電灯を点けると、その異様な暗さに目を見張った。
「うっそ、こんなに暗いって知っていたらもっと持ってきていたわよ」
「ま、どうせ下見だ。気軽に行くぞ」
運転席から降りてきた肉付きのいい男が、そう言いながら車に鍵を掛けた。
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