人生もお肌も曲がり角

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人生もお肌も曲がり角

A大学 博士研究員  小島 紗英(さえ) 様  この度は、若手国際研究支援プログラムへのご応募ありがとうございました。厳正な書類審査の結果、小島様には、次の面接のご準備に進んで頂きたく、取り急ぎご連絡差し上げました。  面接内容については、インタビュー並びに40分の研究発表を予定しており、日時はおおよそ一ヶ月後を考えております。  また、詳しい日程が決まり次第、メールにてお知らせ致します。 ――  信じられない。ダメ元で応募したのが、まさか通過するなんて……。  このメールが届いてから、何十回と読み返している文章に、私はもう一度目を落とした。内容はほとんど暗記していて、真新しい情報はなにひとつ得られないのだけれど、ついつい確認したくなってしまう。  電車の揺れがひどくなってきて、私はスマホをトートバッグにポイと放り込んだ。  つり革にしっかりとつかまりながら、メールの文を思い浮かべつつ、今後のことについて頭を悩ませる。  これから面接があって、運良く、合格、海外派遣ってなったら、そのとき、私はもう二十八歳か……。そこから丸々二年、海外で研究修行してきます――なんて言ったら、お母さん、どんな反応するんだろう……。  修士を終えたら博士課程に進学するって言ったときでも、行き遅れるだの、孫の顔がどうとかって、大騒ぎしてたのに、ポスドクの身で、さらに二年日本を離れます、なんて口走ろうものなら、いよいよこの親不孝もの!って、勘当されちゃったりして……。  はぁ、どうして嬉しいニュースを持ちながら、こんなに胸をざわつかせないといけないんだろう。  いわゆるこれが、人生の曲がり角ってやつ??
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