姉川の戦い

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姉川の戦い

無事に紀州の半分を手に入れた俺は信長からの書状を受け取る。 対朝倉、浅井とは膠着状態に陥り。 決戦をするとの内容の書状だった。 場所は姉川、姉川の戦いである。 織田軍は対朝倉、浅井との戦いを互角に繰り広げて来た。 この一戦で大きく、朝倉、浅井の力を大きく削ごうとしているのだ。 「是非とも参戦してほしいか」 信長から届いた書状を明智光秀に渡して俺は、煙草に火を着ける。 「連戦に次ぐ連戦ですね。兵達の士気は高いですよ」 書状を見た光秀からの返事だ。 伊勢長島に根来からの連戦で我が軍士気は高い。 損害が少ないのが理由である。 そして金ヶ崎の退き口からの姉川の戦いで有る。 織田軍と朝倉、浅井連合はこぜり合いを続けて両軍が決戦に向けて動き出した所か。 「まあ、出兵するしかないか」 「直ぐに準備をします」 太原雪斎が下がって行く。 うちは銭侍だから、銭で録を与えるからな。 他の戦国大名は領地を褒美で与えて居るが義兄はその辺は考えがあるらしく中々、ケチっているらしい。 何はともあれ、姉川に向けて軍の準備をしますか。 元亀元年6月、只野軍は姉川に向けて出陣した。 俺達が到着する頃には織田、浅井、朝倉のこぜり合いは一旦は落ち着く。 俺達は対朝倉軍を任された。織田は浅井軍と向き合う。 朝倉一万三千と向かい合う只野軍は一万と六千。そのうちスパルタ兵が三千だ。 スパルタ兵は選りすぐりの兵で接近戦と乱戦にはめちゃくちゃ強い。勿論、鉄砲も当たり前に武装している。 只野、朝倉両軍は互いに川に陣取って向き合って居る。 「では始めてくれ」 「はっ」 今回の戦いには沼田佑光を連れて来て居る。 騎兵部隊を連れて来たいが数がまだ揃って無いからな。 大陸から汗血馬を連れて来て交配させて軍馬を揃えて来てる段階で有る。 今、組織しても百部隊くらいで焼け石に水だ。今回の戦いではな。 「放てえぇぇいっ!」 パーンッ!パパーンッ! ワンサイドゲームとはこの事だろう。 一万六千の三段撃ちで朝倉軍は一方的に殺られる。 川に徒かして此方に来ようとするが、それは良い的であった。 朝倉側の川はたちまち真っ赤に染まり多くの朝倉兵が倒れた。 「千人位は削ったか?」 「はっ」 うん、雪斎の矯正が効いてるな。 普通、千人も死傷者を出せば大損害で有る。 にも関わらず朝倉軍は退かなかった。 そして朝倉側から一人の武将が前に出てくる。 「俺の名前は真柄直隆!今呂布と言われる只野仁と一騎討ちをしたい!!」 ほう?中々の面構えだ。 何より全身を筋肉の鎧で包み、大きく武骨な大太刀を担いだ姿は、コイツはやる奴だと分かる。 何より俺に一騎討ちを挑むとは中々の気骨の持ち主だ。 「殿、相手の言葉に乗っては行けません!ああ!?もう居ない」 沼田佑光が俺を探す頃には俺は既に、真柄直隆の前に立って居た。 俺は青龍偃月刀を抜いて構える。 「お前の望みは何だ?」 「俺の望みは貴様の首よおぉぉっ!!」 真柄直隆がグンと加速して大上段から大太刀を振り下ろす。 確か太郎太刀だったか? 俺は真下から青龍偃月刀を振り上げて迎え討つ! ガギャッ!ギリリリリッ!! 互いの得物がぶつかり合い金属の嫌な音を辺りに響かせる。 「ほう?」 「けっ!」 速度、力は互いにほぼ互角! 得物の強さもほぼ互角! ならば後は! 「つええぇいぃっ!!」 「うりゃあぁぁっ!!」 ギャリッ!ゴッ!ガゴッ! 時々、互いの防具に得物がかするが互いに獰猛に歯を剥き出して笑いながら戦う。 「へへ楽しいぜ!只野!やっぱ戦はどつき合いだぜ!」 「全くだ!命のやり取りの楽しさを思い出したぞっ!」 とは言え、互いに繰り出すは毎回、必殺の一撃。 そして、互いに一歩も動かない攻防が繰り広げてられて居る。 何時しか敵も味方も俺達を円にして、俺達の戦いを見守る。 誰かがゴクリと唾を飲み込んだ。 「せりゃあぁぁっ!」 「むんっ!」 ギャゴガリイィィィッ! 一度、互いの得物がぶつかり合い俺達は互いに距離を取る。 「悪いな、もう少し楽しみたいが此方も時間がねえんだ。次で終わりにして貰うぜ」 真柄直隆が太郎太刀を上段の肩に置いて、そう答える。 「分かった。ここ来て言葉は無用」 俺も青龍偃月刀を肩に置いてジリリと足を動かす。 一瞬、戦場の時が止まる。 しばしの静寂の後に動いたのは真柄直隆だった。 「はあぁっ!!」 太郎太刀が俺を袈裟斬りにしようと唸りを上げて俺に襲い掛かる。 俺は迫り来る太郎太刀をかわす事はせずに左肩で受け止めると同時に青龍偃月刀が真柄直隆を袈裟斬りにした! 結果、真柄直隆は上半身と下半身に別れて川にその身を晒す。 俺はと言うと真柄直隆の太郎太刀を左肩で受け止めた瞬間にボギィッと音を立てて左肩の鎖骨が折れた。 「なあ…只野…」 「何だ?」 「楽しかったなぁ…」 「ああ」 「次、生まれ変わったら…また殺ろうぜ…」 そう言って真柄直隆の目から光が消える。 「次は殺し合いじゃない決着をつけよう」 俺は死んだ真柄直隆にそう言った。 朝倉陣営から一人の武将が進み出てくる。 真柄直隆に良く似た男だ。 「弟君であるか?」 「左様です」 「で、あるか。ならば兄の遺体を早々に引き取られい」 「拙者真柄直澄と言います。此度の件感謝致す」 もう一人、朝倉陣営から武将が出てくる。 「某の名前は真柄隆基、父の遺体の返却、感謝致す。 この借りは必ずお返し致します」 真柄隆基ね。父に良く似て居るな。 まだ若いが、此れから経験を積めば父のように武に秀でた将になるだろう。 「俺の名前は只野仁だ。まあ何か縁が合ったら宜しくな」 俺は自陣営に帰ると直ぐに手当ての兵が現れるが俺はそれを手で制す。 直ぐにモルヒネを創造して自分の肩に突き立てた。骨折した箇所を直ぐに固定して暫くは痛みが引いて行くまで俺は煙草に火を着けて、煙草を吸う。 「朝倉軍の同様は大きい、俺の代わりに可児才蔵はスパルタ兵の指揮を頼む鉄砲で徹底的に朝倉を叩け」 俺がそう指示をすると全員が指示を全うする為に動く。 「急げよ。浅井が織田軍を喰い破る前にな」 俺は赤兎の元へと一人で向かう。 赤兎に跨がり、俺はあぶみを口で加えて青龍偃月刀を右手で持つと赤兎の腹を軽く蹴る。 今頃は浅井軍の逆襲が始まろうとして居る織田軍に向かって赤兎を走らせる。 見ると浅井軍の一隊が織田軍への強襲を敢行して居た。 「山崎新平の部隊だな。相変わらず練度が高い」 俺は口から煙草をプッと吹き出すと赤兎を更に加速させる。 見ると織田軍は既に13段中、8段目が喰い破られる寸前だ。 織田軍の一人の武将が山崎新平に討ち取られる。 「間に合えぇぇっ!!」 8段目が喰い破られる寸前に俺が横槍を入れる。 「何奴!」 「喧しい!どけっ!」 青龍偃月刀で山崎新平を斬り伏せる。 「山崎新平が討ち取られたぞ!」 浅井軍に動揺が生まれる。 俺はそのまま暴れるに任せ、浅井の兵を吹っ飛ばして行く。 「山崎新平が討ち取られた!仕舞いじゃっ!」 浅井軍が退いて行く。 撤退して行く浅井軍を見届けて俺は義兄の本陣へと向かう。 其処には慌ただしい義兄の姿があった。 「熊っ!?」 「義兄、無事ですか?」 「朝倉を破って浅井を喰い破ったのか!?」 「ええ、ちょっとしんどかったですがね」 その時に初めて信長が俺が負傷して居る事に気付いた。 「熊!負傷しているのか!?」 「真柄直隆、強かったですよ」 「むう、やはり朝倉には熊を当てて正解だったか!戸板を持って参れ!熊は負傷しておるのだ」 信長は直ぐに小姓に戸板を持って来させると、俺を其処に寝かせた。 「兎に角、良くやってくれた。 それに我の軍を良く救ってくれた!」 渡辺盛綱の部隊が撤退して行く浅井軍に襲い掛かって居る。 「ふう、ようやく一服つける」 俺は煙草に火を着ける。 ふう…旨いな。特に危機を乗り越えた時の煙草は更に旨いな。 「兎に角、良くやった!今はゆっくり休め!」 信長はそう言って陣幕から出て行った。 堀久太郎が側に控えて居る。 「何か有れば拙者にお伝え下さい。出来る限りの事はします」 「なら、少し寝かせて貰うかな」 俺はそう言うとイビキをかき始めて寝た。 姉川の戦いは朝倉を圧倒した只野軍、更に一時は窮地に陥った織田軍を救って幕を閉じた。
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