武田との再戦

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武田との再戦

武田との戦いからきっちり二年が経った。 その間に信濃は豊かとなり甲斐から難民が現在は押し寄せて居る。 新しい土地を与えて開墾や、産業に力を入れている。 ブドウや柿を植えたり養蜂や蚕を主な産業にして居る。 後は味噌を作らせて居る。 信州味噌、美味しいよね。 そう言えば馬鹿将軍が追放されたとか、まあどうでも良いがな。 「殿、仕官に浪人が来て居ります」 光秀がずいっと前に出てくる。  「珍しいな光秀が自ら面談しないとは」 「えぇ、人が人ですから」 ん?どう言う意味だ? 「真柄直澄です」 「真柄隆基です」 二人が評定の間で平伏する。 「真柄殿、面を上げられよ」 二人が顔を上げる。 「何故、当家を頼られた」 俺は真柄直澄に説明を求める。 「は、当家は織田家に滅ぼされました。勢いは織田家に有ります。しかし、ながら織田家は朝倉を滅ぼしました。我が真柄家も勢いのある家に付き真柄家を存続したいのです。只野家は勢いが有ります。更に我が兄上を粗略には扱いませんでした」 「話は分かった。うちは銭侍だぞ?構わないか?」 「はっ、構いません」 俺は扇子をパンッと閉める。 「あい分かった真柄直澄と真柄隆基はこれより只野家の家臣だ。侍大将として宜しく頼む」 「は、はっ!」 俺のいきなりの侍大将への抜擢にややびっくりしながらも答える真柄直澄の此れからに期待だな。 「琉球はもう終わったか?」 「はい、次は台湾の地を目指して居ります」 九鬼嘉隆も頑張って居るな。 南蛮船の操舵から運用に海軍の創設。後は新大陸の発見に九鬼澄隆を使うか、現在は鯨漁に精を出してる筈だ。 「それよりも武田ですな」 松永久秀が言って来る。 「やはり攻め寄せて来るか?」 「攻めぬ理由はないでしょうな」 松永久秀が自信満々に言う。 信濃はここ二年の政策で黒字経営へと転化したばかりだ。 信玄坊主が狙うのも無理ないか。 今川に二万の兵を引きいらせて甲斐を狙って貰うかな。 うちからは二万と五千、駿河には北条への備えも必要だな。 雪斎を駿河に向かわせて防衛して貰うか。 どちらにしても信濃に武田軍が来たら叩き出して、そのまま甲斐を攻めとるかね。 信濃に武田が現れる前に信濃の国境付近で俺は陣を張った。 駿河には今川義元の息子、今川氏真が駿河から甲斐を攻める姿勢を見せる。 桶狭間以降、今川義元は今川氏真をスパルタ教育を施し、ひとかどの武将に育て上げた。 本人に武力が無くても岡部元信等の武力集団が居るので、武力集団を上手く機能させるように指導を受けたようだ。 蹴鞠なんてやってんじゃねえよ。お前は此れからきっちり教育な!との今川義元の弁だ。 そして信濃の国境付近、当然のように武田の使者が現れる。 「高坂昌信よ。また貴殿か」 「只野殿、此度の挙兵は何故?停戦は二年との約束ですが二年経って直ぐに何故、甲斐を攻めるのですか?」 本多正信が俺の言いたい事を言ってくれる。 「はて?確かに二年の停戦でしたが、我が只野家が武田を攻めないと何時保証したでしょうか?」 「それは…「もう良い」!?」 俺は前に乗り出して高坂昌信に伝える。 「関東だ」 「は?」 「関東を取るのに甲斐は邪魔何だよ」 俺は手をヒラヒラする。 「関東を…北条を攻めるのに甲斐は邪魔だと?」 「そうだ。甲斐を攻めるのは北条を攻める次いでだな」 此れには高坂昌信が激高する。 「我等は武田ですぞ!」 「そうだな。かつては戦国最強と言われた武田だな。だが…そろそろ、その最強の看板は降ろして貰おうか。高坂昌信よ。お前が帰ってから三日後に甲斐を攻める。信玄坊主に念仏でも唱えとけと伝えとけ」 俺はそう言って立ち上がる。 高坂昌信はふるふると震えてその場を暫くは動けなかった。 「今回は少数だが、武田の騎馬軍団に本当の騎馬軍団を見せようと思う。 榊原康政、お前の手腕に期待する」 「はっ!」 「何、失敗なんか気にするな。お前はまだ若い、失敗を恐れずに前に進め」 「はっ!」 俺は榊原康政の肩に手をポンと置く。う~ん緊張でガチガチしてるな。 以前から汗血馬との交配で、馬体の大きな馬が揃いつつある。 そもそも馬は金食い虫だ。 あの武田騎馬軍団でさえ、戦闘の時は馬から降りて戦い。 更に指揮官しか馬に乗って無かったとか… うちはまだ騎兵三百しか居ないが、三百の騎馬の突撃は武田に恐怖を与えるだろう。鉄砲の音に恐れないように射撃場の近くに馬の繁殖場を置いたからな。 騎馬鉄砲も出来るようにして来たぜ! ちなみに織田家は三好を四国に追い返し、本願寺とバチバチ殺りながら西へと勢力を伸ばして居る。 さて、肝心の武田戦だが、信濃と甲斐の国境に武田軍勢が現れた。 武田四名臣は健在、武田四天王とも言うが見事な旗が並んで居る。 武田軍勢は約二万、良く集めたと言った方が良いだろう。 限界動員まで集めた感じだな。 さて、武田信玄はどう出るかな。 ドーンと太鼓の音が響く。 先鋒は山県昌景の赤備えが押し寄せて来る。 それを鶴翼の陣形で迎え討つ。 中央は光秀が自慢の鉄砲隊を率いて居る。 左翼は石川数正、右翼は蒲生賢秀が備えて居る。 もうちょい近寄ってくれば中央に島左近の大砲部隊が待って居る。 それと榊原康政の騎馬隊か。俺のスパルタ隊六千も居るな。 武田の馬鹿正直な戦に付き合う義理は無い。 ある程度、山県昌景の部隊を引き寄せてから鉄砲の射撃を加える。 パパーンッ!パーンッ!パパーンッ! この時、武田の全軍が突撃して来て乱戦になれば勝敗はどちらに上がるか分からなかったが、太鼓ごとに突入する部隊を決めて居た武田の戦いはいたずらに兵を損なう事になる。 山県昌景の部隊が充分に兵を減らした所で榊原康政の騎馬隊三百が、山県昌景の部隊に突撃する! 指揮官だけが馬に乗ってるのと違って全員が騎馬に乗って居る我が只野家の騎馬突撃は、山県昌景にとって充分に脅威だった。 只野家の騎馬隊は大きな鎌を構えて突撃する。 丁度、敵兵の首に来る位置だ。 榊原康政の騎馬隊が突撃して、山県昌景の部隊を通り抜ける頃には無数の首が転がって居た。 更に榊原康政は山県昌景の部隊の後ろから突撃する。 更に甚大な被害を出すと、山県昌景は直ぐに撤退をして行った。 直ぐに榊原康政が俺の所へ現れる。 「良くやった!此れで武田騎馬軍団の不敗神話は崩れた!」 榊原康政の興奮はなかなか収まらない。 「は、はっ!まさか此処まで上手く行くとは思っても居ませんでした」 実際に馬がそのまま来るのはすげえ怖いと思うよ。少なくない数の武田兵が馬にはね飛ばされて居たし。 先ずは此方の勝ちだな。次はどう言う手で来る信玄? ドーンドーンドーンと太鼓が打ち鳴らされる。 「武田はそう攻めの構えを見せるようだな」 側に居る可児才蔵が答える。 「右翼と左翼は山内一豊と堀尾吉春が副将に付いてるから上手くやるさ。俺達も準備しないとな」 真柄直澄と真柄隆基がそれぞれの得物を構える。 この二人は武勇に優れるから、才蔵と同じスパルタ隊に編入した。 武田がそう攻めで押し寄せて来る。 それを只野軍は鉄砲と大砲で減らせるだけ数を減らす。徹底したアウトレンジからの攻撃で武田の将に少なくない犠牲が生まれる。 初鹿野、真田兄弟や内藤昌豊等の武将を討ち取った。それでも武田の勢いは止まらない。 此処で初めて俺は前に出る。 「お前達!敵は!」 「「「「「「殺せ殺せ殺せ!」」」」」」 「捕虜は!」 「「「「「要らぬ!」」」」」 「俺達のする事は!」 「「「「「殲滅!殲滅!」」」」」 「ならば狂うぞ!戦場で狂うぞ!」 「「「「「おおおぉぉぉぉぉっ!!」」」」」 とある神様との修行で身に付けた狂騒化のスキルをしようする。 スパルタ隊が狂騒化してその狂いは全軍に伝わる。 武田のそう攻めに対して此方もそう攻めで狂騒化する。 ガツンとぶつかり合う二つの軍団。 しかし、吹き飛ばされたのは武田兵の方だった。 此処からはワンサイドゲームとなった。 スパルタ隊には俺の特製の武具を貸し与えて居る。 怪我人等出るはず無く、武田軍を蹂躙して行く。 堪らず武田は撤退をして行くが当然、只野軍が易々とそれを許す筈無く。 武田は多くの犠牲を出しながら撤退して行った。 そして、そのまま甲斐に侵攻して行く。武田軍は史上初めて躑躅ヶ崎館に籠城する事になった。 城は人、人は石垣と言われた武田信玄なのだが躑躅ヶ崎館はしっかりと改修がされて居てなかなかの防御を誇って居た。 「まあ、大砲で削るけどな」 俺の声と共に大砲が躑躅ヶ崎館にドパドパと撃ち込まれて行く。 充分に削り切った所で兵を投入する。 あっと言う間に本丸を残して躑躅ヶ崎館の占領は成って行く。 俺は降伏の使者を出す。 降伏の使者は俺が自ら行く事にする。 真柄直澄と可児才蔵を伴って俺は躑躅ヶ崎館の本丸へと入って行く。 其処には内藤昌豊を除く武田四名臣の残りと武田信玄が座って居た。 「お初にお目にかかる只野家当主、只野仁だ」 評定の間にザワザワとどよめきが広がる。 「よくぞ来られた只野殿」 中央に座る武田信玄が短く言う。 「信玄殿、降伏の意思はおありか?」 シーンと評定の間は静かになる。 「此処に来て今、只野殿を斬っても武田は潰えるだろう。ならば降伏してお家を残しとう御座る」 信玄はそう短く言葉を発する。 俺を斬ると言った時には真柄直澄と可児才蔵が思わず、得物を持ちかけたが俺が手で制した。 ぶっちゃけ俺一人でも切り抜ける余裕は有るしな。 鼻をほじりながらは余計だが、其れくらいの余裕の雰囲気を俺は漂わせている。 「良かろう今日より武田は只野家の物だ。うちは知っての通り銭侍だ。銭侍が嫌な者は当家を去るも良し、敵対するも良し止めはせん。 そして武田信玄の命は保証する。 家老として只野家を支えてくれ」 『おお、御館様は首を切らなくて良いのか』 等の声が聞こえる。 「うちは人手不足でな使える者は何でも使う。宜しく頼むぞ信玄」 「ははっ!」 武田信玄を含む武田家一同が頭を下げて来る。 ふむ、武田の武将の主だった武将が手に入るのは此方としても有り難い。 「武藤喜兵衛と言う者は居るか?」 「はっ、此処に」 「今日より真田昌幸を名乗れ。そして真田家を継げ」 「は?は!」 武藤喜兵衛が頭を下げる。 「今後は松永久秀と本多正信と共に俺に使えよ」 「はっ!」 いきなりの大抜擢だからビックリしただろう。大丈夫だ。うちはいきなり抜擢したりするのは当たり前だから。 武田家が降伏した事により甲斐を手に入れた只野家。 此処からは甲斐も良い国にしなくてはな。 稲作に頼らない国作りを進めるか。 寄生虫が有るからね。それを治す薬は今は無いからなぁ。 一部の只野家に仕える事を良しとしない豪族や武将達を俺は容赦無く潰して行く。 此処で少しでも慈悲を見せれば甲斐は纏まらないからな。 さて、後は北条に対する備えかなぁ?  
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