東北遠征

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東北遠征

ふう、先日はいきなりブチキレた義兄に追い回されて大変だったな。 器用に鉄砲三丁を回し撃ちしてきて、本当に死ぬかと思ったよ。 それはそうと上杉謙信の使者がこの前やって来たな。 何でも只野家と同盟したいとか。 織田家とも同盟してるから俺とも同盟しておくかて感じかな? そんな事を考えつつ政務をやり終えた頃に三成がダイビングするかのような勢いで飛び込んで来た。 「上杉が軍を起こしました!真っ直ぐに此方に向かって来ております!」 ナ、ナンダッテエェェッ!! 上杉謙信、三度の飯より戦好き。 やることは毎回攻め寄せては、その国の大名の領地を荒らし人を多くさらい他国に売ってしまう悪党の面も合わせ持つ。 こりゃ、うかうかしてられんな! 「直ぐに動かせる軍勢を動かせ、国境にて先ずは後続が来るまでの時間稼ぎをするぞ!」 「はっ!」 三成がバタバタと出て行った。 謙信め、何故今になって軍を起こした? 「上杉軍、一万五千!」 その報告を聞いた時に俺は覚悟を決めた。 上杉謙信と殺り合う覚悟を決めた。 只野軍は先発隊として一万二千の軍勢を上杉との国境に引き連れた。 国境に着いて見ると、上杉軍が待ち構えて居た。 「直ぐに隊列を整えよ!上杉軍が来るぞ!」 しかし、上杉軍に動きはない。 暫く待って居ると上杉軍から、単騎駆けを行う者が現れた。 袈裟を着るその姿はまさしく、話に聞く上杉謙信であった。 上杉謙信は単騎駆けで俺の陣へと走って来る。 俺の近衆達が俺の回りで陣を組もうとするが俺が手で止める。 「話が有るのだろう。取り敢えず手を出すな」 上杉謙信が俺の前まで来る。 「只野仁か?」 「そうだ」 「武田は何故敗れた?」 「俺より弱かったからだ」 「北条は何故敗れた?」 「城に籠ってばかりじゃ俺に勝てねえよ」 「そうか…」 グビリと上杉謙信は瓢箪に入った飲み物を煽る。 一口飲んだ後にその瓢箪を俺に放り投げる。 俺に飲めと言って居るのかな? まあ、毒なんぞは入って無いし、此処は飲むか。 「げっほ!」 俺は一口、瓢箪の飲み物を飲んだ瞬間にむせた。 「酒かよ!しかも凄く強い!」 上杉謙信はニヤリと笑う。 「臭水」 「ああ?酒の名前か?」 上杉謙信はコクリと頷く。 「所で上杉殿は何用で俺の所へ?」 「我が望むのは只野仁との同盟」 成る程、同盟を結ぶ為に軍を起こしたと? 訳が分からんわ! 何故、同盟を結ぶ為に軍を起こすねん! 此方が少しでも弱味を見せたら絶対、攻め込む気満々やったやろ! 俺が脳内で一人突っ込みをしてる所へ上杉謙信が問いかける。 「返事は?」 「分かった同盟しよう」 織田家とも上杉家は同盟をしてるしな。問題無いだろう。 「後日、使者を出す」 そう言うと上杉謙信は己の軍の元へ向かうと撤退を始めた。 その撤退姿は見事な物で整然と並んで堂々と去って行った。 まさに戦に関しては神に愛されて居ると思われても可笑しくないな。 後日、斎藤朝信と言う上杉家の家臣が使者として現れて詳細に光秀と同盟の内容を煮詰めて居た。 そんな様子を他所に俺はとある難問な人物と会って居る。 「只野殿、官位居る?あ、金は貰うけどね」 「近衛前久、いつもたかりに来るなよ」 「うち貧乏だし、帝にばかり贈り物してるじゃん?」 「帝のお墨付きは商売になるからな」 そう俺は帝に毎年の贈り物と新しく作った製品、椎茸の乾物や鰹節等や只野米や領内で作られる調味料や酒等を贈って居る。 「それをうちにも贈って欲しいし、次いでに貴族の娘要らない?」 此れだ。近衛前久はやってくる度にあれやこれやと物を持って帰り。次いでに俺の名義で勝手に買い物をして帰る。 次いでに貴族の娘の紹介を勝手にしてくる。 只野領は金持ち、食うに困らず仕事も豊富と言う話が全国に知られて居る。 「しかし、貴族が今は貧乏ねぇ…」 「普通の子に混じって野草を取りに貴族の子女が良く行って居るよ」 ううむ、一人でも貴族の娘を娶るとうちもうちもと次々に、見合い希望がやって来そうだな。 「取り敢えず、この娘に会って見てよ良い娘だから」 「ああ~悪いな俺は此れから東北遠征に入る。此れを期に最上、伊達、南部を平らげて蝦夷を一気に開拓に向かいたいからな」 「ひゅ~、やる気だねぇ只野殿。あんな魔境に突っ込む何て」 「まあ実際に血筋が複雑に絡みあった魔境は間違い無いが東日本を完全に統一して義兄に言われた事をやってのけましたよと言いたいからな」 義兄の尻を叩く意味でもな。 「じゃあ今回は大人しく帰るけど次は見合いしてくれよ。大臣級からも見合いの要請が来てるから」 近衛前久は今回も大量にお土産と言う名の強奪を行い帰って行った。 あいつ、いつかぬっ殺す! それから3ヶ月、上杉とも無事に同盟を結び俺は軍を起こした。 あ、上杉との同盟の条件は食糧の売り買いだ。うちが食糧を売り上杉が金で買うWin-Winな関係だ。 さてと東北魔境に向かいますかね。 その頃、名門伊達家は最上家、南部家や他の周辺国を巻き込んで只野家に対抗するべく連合軍を起こした。 盟主は伊達輝宗だ。 「只野軍を打ち破った暁には関東を皆で手に入れましょうぞ」 しかし、最上義光は不安だった。 あの武田と北条を降した只野軍は侮れないと内心、不安に思って居た。 最上義光の不安は悪い意味で当たる事になる。 平野にて蘆名と佐竹義重の案内の元に先ずは一戦と相成った。 伊達、最上、南部、安東、相馬、戸沢軍との睨み合いになった。 兵力はほぼ互角だが、兵の装備が違う。 向こうはバラバラな装備に対して此方は装備を統一して東北連合軍に挑む。 先ずは相馬、安東軍が右翼に攻め寄せて来た。此方は鶴翼の陣で迎え撃つ。 右翼は今回は大抜擢した大谷吉継に全てを任せて居る。 大谷吉継は先ずは騎馬が多い相馬軍に銃の照準を合わせて一斉に撃ち放った。 一万五千の鉄砲が鶴瓶撃ちにて発射されると相馬軍はバタバタと倒れて行く。 それを見てた安東軍は回れ右をして逃げて行った。 相馬軍も大きな被害を出しながら撤退して行く。此処で大谷吉継は追撃を行わなかった。中央と左翼が動いて無いからだ。 戦はまだ初戦も初戦、自分が突出して戦功に逸る訳には行かないと大谷吉継は自重した。 しかし、鉄砲はまだ東北にはそんなに備わって無いようだな。 まあ鉄砲の殆どは織田家が金の力で買い上げて居るからな。 そう言えば戦国時代は鉄砲の数が世界一だったらしいな。 織田家には現在、六万丁もの鉄砲が集められて居る。 四国征伐と毛利討伐に使うらしい。 さてと戦況に戻るぞ。
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