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次に左翼に最上義光の軍と戸沢盛安率いる軍だ。
戸沢盛安が率いる軍は千と少なめだが、全員が騎馬に跨がって居る。
左翼は石川数正が武将として居る。
最上軍は竹束を盾にして突貫してきた。
その後ろを戸沢軍がヒタヒタと着いて来る。
「撃てぃ!」
石川数正の号令の元に鉄砲が一斉に撃ち放たれる。
最上軍の統制が取れて居るのか、バタバタと倒れる最上軍だが、石川数正が備える左翼に喰らいつく。
直ぐに鉄砲隊の後ろから長槍隊が踊り出て最上軍を牽制するが、中央の南部、伊達軍がこの機を逃すまいと一気に前進してきた。
只野軍の中央には佐竹義重と真壁氏幹が鉄砲を撃ち放ち南部、伊達軍の両方に備える。
すわ乱戦かと思ったが右翼がフリーとなって居る為に中央の伊達、南部軍を攻撃し始めた。
この混戦を利用して戸沢盛安が動いた!
するすると千の兵を巧みに動かすと左翼を指揮する石川数正に向かって一丸となり進み始めた。
しかし石川数正は最上軍に掛かりきりで戸沢軍の動きには全く気づいて居ない。
やがて石川数正の元へ戸沢盛安が迫る事に成功する。
「名の有る将と見た覚悟!」
「しまった!」
だが、戸沢盛安の繰り出す槍が石川数正に迫る!が、間一髪で戸沢盛安の槍が塞がれる。
「いやぁ石川殿、油断大敵ですよ」
その槍を防いだ人物は?
「飯田殿、感謝致す」
戸沢盛安の槍を防いだ人物の名前は飯田覚兵衛。
虎加藤で有名な加藤清正の家臣で後に黒田長政に仕える事になる。
日本七本槍にも抜擢される有名人だ。
加藤三傑にも取り上げられ、その槍の働きは日本七本槍の名に恥じぬ働きを見せて石川数正の危機を救った。
戸沢盛安は躊躇しなかった。
奇襲が失敗と判断したら、全軍一丸となって撤退して行った。
その見事な采配に俺は思った。
「あの軍勢欲しいな。特に兵を率いる将が素晴らしい。直に殺り合いたかったな」
「ではこの戦が終わった後に調略を仕掛けて見ましょう」
俺の側でコーヒーを入れる松永久秀が、ポツリと呟く。
左翼は石川数正が最上軍を押し出して、更に鉄砲隊が巧みに最上軍を的確に鉄砲で撃って最上軍はその数を減らし撤退して行った。
そうなると危機に陥るのは伊達、南部軍が右翼と左翼の圧迫を受けて、その数をすり減らして行った。
「己!只野軍め!悔しいが撤退だ!!」
南部晴政は悔しそうに全軍の撤退を指示した。
「追撃の指示をしないのですかな?」
島左近が俺に聞いて来る。
「勝ちすぎると敵が一枚岩になる。此処は各個撃破だな。最上領に攻め込むぞ」
「はっ!」
只野軍は一度、編成を見直すと粛々と最上領へと進軍して行った。
「くそ!思った以上に只野軍の進軍が早い!」
山形城に戻り軍を再編成をしようとした時に只野軍の来訪が告げられる。
山形城を続々と取り囲む只野軍を見て最上義光は此処に至って降伏を願い出る。
最上家が生き残る為に最善の道を最上義光は考えるのだった。
「次は戸沢領と安東領だな」
俺は南部と伊達を孤立させるべく次の手を打つ。
「最上殿、本日はどの用で?」
本日は最上義光に呼び出された戸沢盛安。
「戸沢殿に引き合わせたい人物が居る」
最上義光が案内した先には一人の大柄な男が座って居た。
「この方は?」
「只野軍の総大将、只野仁様だ」
「!?」
一瞬、戸沢盛安は刀を抜きそうになるが、直ぐに刀を抜くのを抑える。
それは刀を抜こうとした一瞬に仁が凄まじい殺気を放ったからだ。
その瞬間に瞬時に悟った。
『刀を抜いたら殺られる』
武器らしい武器を持たずに飄々とした姿だが、野獣を内包して居るのを戸沢盛安は確かに感じた。
冷や汗を流しつつ最上義光は仁を戸沢盛安に紹介する。
そして互いに向かい合う形で座る事になった。
「初めまして只野仁だ」
「戸沢盛安です」
暫くの間、沈黙が三人の中に流れる。
その沈黙の空気を破るように俺は言う。
「戸沢殿、此方へ付かぬか?」
「何故?」
お~、ある程度は予想はしていたみたいだな。
動揺してない。
「それだけ戸沢殿の力を買っているからさ」
「某の力を?」
「ああ、あの時の戦の戦い振りは良かった」
まあ、夜叉九郎と言われた人で信長の再来とか言われた人だからな。
まだ若いし、病気で早死にするみたいだが、変若水を与えれば長生きも出来よう。
「しかし、某は負けました」
戸沢盛安は言う。
「戸沢殿は負けては居ませんよ。あの撤退は見事な物でした」
「百戦錬磨の只野殿に言われると、嬉しいですね」
戸沢盛安の顔が少し上機嫌になる。
俺はここぞとばかりに畳み掛ける。
「戸沢殿、どうか最上殿と共に東北の安寧の為に俺に力を貸してくれまいか?」
「しかし…」
戸沢盛安は言い淀む。
「最上殿には東北征伐が終わったら東北を任せようと思う。無論、軍事面では戸沢殿に任せようと思う。それだけの才覚を戸沢殿は示した。
この只野仁がお頼みもうす。どうか東北の安寧の為に力を貸してはくれまいか?」
「…分かりました。其処まで某の力を買って頂けるのであれば、この戸沢盛安、只野殿に力をお貸しします」
「かたじけない!此れから宜しく頼む!」
「いえ、此れからは最上殿と共に只野殿を殿と仰ぎます」
そう言って最上義光を見る戸沢盛安。
「二人共、此れからは宜しく頼む」
「「はっ!」」
「所で最上殿、伊達を調略出来ないか?」
すると最上義光はううむと首を唸らせる。
「難しいでしょうな。特に伊達は東北探題の地位を狙っております。それに血筋にも誇りを持って居るゆえに調略は難しいでしょう。伊達、最上の領地は暫くほっておいて、先に安東の領地を抑えれば奴等も慌てる筈です。
何せ互いの領地に楔を打ち込める訳ですからな」
最上義光はそう説明する。
「分かった東北連合軍としての動きが取れない今、先に安東領を攻めて伊達、南部を圧迫させるのだな?」
「はっ、左様で」
「合い分かった。では只野軍は此れより安東領へと進軍する。最上、戸沢両名は只野家が物資を支援するので元の領地を立て直してくれ。物資は惜しまん」
「「はっ」」
まあ、二人共は銭侍になって貰うがね。まとめて開発をした方が効率は良いしな。その事を重々に説明して更に物資を先ずは最上家の城の倉に一杯に積めたらびっくりしてたな。
金銀、兵糧、更には鉄砲も与えたら最上義光は完全にびびってしまったようだ。
あえて只野家の財力や力を二人に見せつける事によって二人の戦意を挫く事には成功したようだな。
改めて忠誠を誓ってくれた。
更に銭侍になった事と効率的な領地運用を知り、最上義光は俺の凄さを再認識したようだ。
此れには戸沢盛安も同様のようだな。
現在、二人は元の領地を立て直すと共に鉄砲を使った防備をしいて貰って居る。
俺が安東を攻めてる時に伊達と南部が攻めて来た時に持たせる為だ。
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