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幕間、綾殿
唐突だ。
何時も唐突に近衛前久はやってくる。
上杉謙信をエリクサーで治療して(酒の飲み過ぎで高血圧になって居た)長生きの伝授を行って居る時にだ。
「た~だの君!官位を授けにやって来たよ!」
「官位は貰おう。しかしお前は帰れ」
「次いでに側室候補を連れて来たよ!血筋はバッチリで高貴な産まれの御婦人だよ!」
「人の話を聞けよ!」
「落ち着くのだ。只野殿」
「謙信殿はお酒を控えましょうね!後つまみに梅干しは駄目ですからね!それと近衛!いきなり側室候補を連れて来るな!何時も何時もお前はいきなり何だよ!」
塩で酒を飲む酒豪も居るからなぁ。
「まあまあ、良いじゃないか!只野殿には是非とも朝廷との縁を深めて貰いたい!後、お金無いから、また貸して!」
俺はプルプルと顔を赤めて青龍偃月刀を引き寄せようとしたら、流石に謙信が後ろから俺を羽交い締めにする。
「落ち着け、只野殿。耐えるのだ」
確か近衛前久と上杉謙信は交流が会ったよな?
となると近衛前久の性格は熟知してるか。
俺は一旦、落ち着き謙信に問題無いとジェスチャーをすると、謙信は羽交い締めを辞めた。
そして近衛前久の前に改めて座る。
「取り敢えず、その側室候補を見てみようか」
俺の顔はブスッと剥れて居る。側室を日頃から貰うように犬や艶から言われて居るからだ。
むしろ今回は良い機会だろう、近衛前久の申し出は渡り船だしな。
俺も朝廷との繋がりは太くしておきたい。色々と朝廷に贈り物をして居るが縁組で更に朝廷との繋がりを太くしておく事は悪く無いと思ったからだ。
「其れでは綾殿~どうぞ!」
それは肉塊だった…大きく分厚く、大雑把でそれは人言うより肉塊だった…
「チェンジ!ゲッターチェンジだ!この野郎っ!」
俺は前久の胸ぐらを掴んでガクガク揺さぶる。
「照れちゃって可愛い、只野殿!」
本当にコイツはぬっ殺してやろうか?
「綾殿か、確か大臣の娘だったな」
「はい、初めまして只野様、上杉様」
意外なミルキーボイスで綾と呼ばれた肉塊が答える。
「ああ、どうも初めまして綾殿とお呼びしても良いですかな?」
「はい、好きに呼んで下さい」
うむ、少し話して見ると凄い良い人に思えるが体型がなぁ…
歩くより転がる方が早そうだな…
その時、綾殿の腹がくぅと鳴く。
「取り敢えず、お昼にしましょうか」
俺は苦笑を交えつつ、綾殿と近衛前久を食堂へと案内した。
謙信はまた来ると言って帰って行った。
「本日の昼飯は豚のしょうが焼きで~す!」
食堂に着くと調理場担当の人が叫んで列を整理している。
俺?俺は城の城主だからな、勿論並ぶぞ!
只野家の食堂は朝昼晩と三回出す。
勿論、無料で振る舞ってご飯はお代わり出来るようにして居る。
身体が資本だからな。独身者達には非常に助かる食堂な訳だ。
実際に三成を筆頭に高虎や吉継等の若い衆が朝昼晩と良く利用している。
そんな食堂に綾殿と近衛前久を案内して席に着いたら、凄い勢いでしょうが焼きを食べ始めた!
まるで俺の胃袋は宇宙だ!と某ドラマの俳優が言ってるようかの、食いっ振りだ。
近衛前久は遠慮なくお代わり、綾殿は遠慮しながら大盛でお代わりと食いっ振りが凄まじい。
普通に結構な量のご飯何だけどなぁ?
綾殿の食いっ振りを見て藤堂高虎がボソリと言う。
「共食い?」
俺は高虎にジャーマンスープレックスを掛けて静かに床に沈めた。
「どうかされましたか、只野様?」
綾殿は大盛のご飯を一旦置いて、俺にどうかしたか聞く。
「いえ、何でもないですよ」
そう言うと俺は食事を再開した。
さて、食事が終わって近衛前久はふらりと何処かへ出掛けた。
「後は若い者に任せて僕は席を外すよ」
そう言ってふらりと居なくなり、綾殿と二人きりになった。
「只野様、今回の件は申し訳ありませんでした」
急に綾殿が謝り出す。
「今回の件?ああ、縁談の件ですね。気にしないで下さい近衛殿が強引に事を進めたのでしょう」
「それでも今回の縁談は断るべきでした。父が近衛様と強引に事を進めたのです。家が貧乏なばかりに…」
そうなんだよなぁ、この時代の貴族、貧乏過ぎだろうと俺は思って居た。
「父が只野家と縁を繋いで援助を貰おうと必死に頼むで私も断りきれませんでした」
「綾殿の気持ちは分かりました。綾殿はこのまま帰りたいですか?」
「正直に言いますと帰りたく無いです。此処では満足に食べれますし」
むしろ、どうやってその体型を維持出来たのか俺は知りたい。
「分かりました。では、うちで雇いましょう女中頭として働いて下さい」
「宜しいのですか!?」
「ええ、綾殿の教養と知識をそのままにするのは勿体ない。是非ともその力を貸して欲しいですね」
綾殿は頭を下げる。
「此方こそ宜しくお願いします!」
綾殿を女中頭として雇ったお陰で只野家の女中達は気品や教養を身に付けて、綾殿は女中達を引き締める事に成功する。
後に藤堂高虎と交際をスタートさせて無事にゴールインする二人は幸せそうだった。
「あの全てが包まれる感触が良いのです!」
うむ、高虎がマニアックな嗜好があるとは俺を持ってしても見抜けなかった。
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