九州大乱戦!

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「久しぶりだな氏郷」 俺は蒲生氏郷を出迎える。 「大殿!此度の武具の下肢、真に有り難き幸せ!見て下され!すぱるた兵に死傷者は居ませんぞ!」 「うむ、大勝したのだな。ご苦労であった」 「いえ、全ては大殿の御威光の賜物です!」 「後は本州から織田の本隊が来るまで待てば良い訳だ。楽な仕事よ」 俺と氏郷は島津の本国を無理に攻めずに国境で陣を敷く事にした。 そして、龍造寺だが鍋島と言う奴が龍造寺家を掌握し肥後にこもって居るようだ。 その辺りの判断は義兄である信長に任せよう。 今回の戦で島津軍は大敗をして更に尋常じゃない被害を出した。 落とし所は薩摩、大隅の二ヶ国安堵だろうな。 この辺りの話しは義兄と既に決めて居る。 後はとどめの一撃で織田の本隊が到着して島津の降伏を待つのみだな。 それにしてもどうしようかな? 俺は陣幕に居て、負傷している島津義弘の事を思う。 無条件で離してやりたいが、立花勢や高橋紹運がそれを良く思わないだろう。 ならば降伏使者を俺が自ら務め、その時に島津義弘を返すのがベターだな。 「よ、元気かい?」 俺は負傷している島津義弘の陣幕へと顔を出す。 「此れは只野殿。見ての通り大人しくして居れば傷の痛みは少ない」 「あまり無理するなよ?うちの医療部隊の見立てでは全治三ヶ月の怪我らしいからな」 島津義弘は左腕の骨折と、(あばら)を数本折っているらしい。 まあ、腕と肋を折ったのは俺のせいだからな。 半月後、織田の本隊がいよいよ九州へと侵攻を開始した。 その数、十万を超える軍勢である。 先ずは龍造寺が真っ先に降伏をし、肥後一国の安堵となった。 そして大友は信長の前で改めて恭順の意を示し日向一国の安堵となった。 そして残るは島津となった。 「義弟、お前を使者として送るから島津を降伏させよ。薩摩、大隅の二ヶ国安堵で話をつけて来い」 やっぱりな。俺が使者に選ばれたかぁ。 「俺が使者になるのは構わないけど、俺の安全はどうなる?」 「其処は貴様の判断に任せる。島津がまだ牙を剥くならば、十万の兵で磨り潰してくれよう」 そうだね包囲殲滅戦は義兄の得意分野だからね。そう判断するよね。 「分かりました。島津は何とかしましょう」 「うむ、任せる」 俺は島津義弘の陣幕へと向かう。 只野軍の本隊も到着し、雑然となって居る。 その様子を見ながら島津義弘は愕然としていた。 先ずは装備の違いと完全統一した武装。 次々と運び込まれる最新の兵器、並びに戦場ではあり得ない炊事部隊の存在は様々な部隊。 只野軍と島津軍の差を明確に感じて、島津義弘は負けるべくして負けたと感じて居た。 「此処に居られたのか島津殿」 「うむ、只野殿か」 「驚いて居られますかな?」 「うむ、島津は負けるべくして負けた。只野家は決して敵に回しては行けないと感じて居る所よ」 「言いづらいのですが…」 「分かって居る。降伏の件だな」 「俺が使者として赴きますので、島津殿は其処で解放します」 「承った」 敵意が心地いぃぃぃぃっ!! 現在、敵意がひしめく島津家の面々の中、俺は島津義弘を解放して評定の間へと座って居る。 まあ、散々に只野家が裏で表でと島津家を討ち破ったんだ。そら敵意がガン剥きするでしょうなぁ。 島津義久が俺に向けて言葉を発する。 「大隅、薩摩のみの安堵とは島津も安く見られた物だ。もう一戦して島津の意地を見せてくれようか」 強がりを見せる島津義久、既に島津義弘から話を聞いて居ると思うが、それでも尚、強がるか… 「構いませんよ、島津との戦をしましょうか?只野家のみで」 ザワザワと評定の間は煩くなる。中には今度こそ勝つと意気込む者も居るがその者達を黙らせるべく島津義弘が動く。 「待てお前達、今、只野家と争ったら確実に我が島津家は滅ぼされる」 断言。 島津義弘は断言した。 「やって見なければ分かりませぬ!」 血気に逸る武将が出るが島津義弘が視線で黙らせる。 「もう一度だけ言うぞ。只野家と戦えば此方の一方的な全滅だ。そうだろ家久」 家臣の視線が島津家久へと一気に集中する。 「兵の数、装備の質で我等の一方的な敗北となりますな」 スパルタ兵のふざけた防御力、更に攻撃力を目にした家久は今の島津では絶対に勝てないと判断している。 「ならば織田家では無く、只野家に降伏しよう」 島津義久がそう宣言するのを俺は慌てて止める。 「いや、俺は義兄から織田家への降伏をするように言われて来たのだが!?」 「何、織田家と只野家は深い繋がりを持って居る。只野殿が織田信長の妹を娶ったように息子の只野義信殿の嫁も織田信長の娘と聞く。この際にはっきり言うが我等は織田家と戦って降伏した訳では無い。只野家と戦って降伏をするのだ。それに織田家と言うが只野家に降伏しても織田家に降伏したのと大して変わらん。只野殿、どうか織田家との繋ぎ宜しくお願い致す」 全部、此方に丸投げじゃ無いかぁ… 嫌だなぁ…それよりも良く息子の情報まで持ってたな。 島津家には優秀な諜報員が居るようだ。 結局、俺はその案を飲む。 そして宴へと案内されて薩摩は米が育ち難いと話を聞かされて俺なりの薩摩の農業を話した。 実際に安納芋を取り出して、石焼き芋にして宴の武将達へと配ったら取り合いにまで発展した。 戦国時代のスイーツはまだそんなに普及してないからね! 更に安納芋を使い豚を育てて畜産に重きを置いて、更に安納芋で焼酎を作っては?と話した所、酒の部分に皆が異様に反応して、詳しい作り方を聞いて来た。 「只野殿、詳しい説明を是非、薩摩の為に」 島津義久が目を爛々と輝かせて俺にもっと話をせがむ。 「では書物にして義久殿にお渡しします」 「おお!有難い只野殿、丁度、年の頃の娘が居ましてな」 「いえ、嫁は今の所は、間に合ってます」 「そうですか…」 本当は嫁を増やせと三成辺りからチクチクと言われて居るがね。 「只野殿、いや大殿。此れから宜しくお願いします」 島津家久がいきなり俺を大殿と呼び始めた。 「家久殿、急に大殿と呼ぶのは?」 「家の為です。酒の席ですが、既に兄達と話を終えて居ります。島津家を二つに割り島津本家は織田家に臣従。某、家久と歳久兄上は只野家に直接仕え島津本家に何かあっても良いようにした策です」 「本当は只野家の装備を調べたり内政を調べて本家の島津家に送るつもりだよね?」 つぅ、と家久が冷や汗を流す。 「大殿には敵いませんな」 「別に構わないよ島津家とは仲良くしたいし物資の援助とかも全然構わないよ。取り敢えず島津家の転換政策が上手く行くまで只野家は全面的に援助するよ」 本音を言えば米が不作する度に戦を起こされたんじゃ、此方が溜まりませんからね。 ならば全面的に支援して、島津家が富める国になって貰わないとな琉球も此方の支配下に置いたしね。 「おお、何と有難い。只野殿、家久と歳久をお頼み申し上げます。それと此れは某の思いですが恩には恩で返します。島津家は只野家に決して槍を向けないように代々言い聞かせます」 島津義久はそう言うと酒を注いで来た。 三日後、島津義久は織田信長と対面した。ちょんまげを横にしてだ。 島津義久は織田信長に臣従したがその格好が奇妙だった。 顔を横に背けるとちょんまげが丁度、信長に向くようにしたからだ。 此れはお前に臣従した訳じゃねえぞと言ってるような物だ。 しかも、島津義久はニコニコと顔を俺に向けて居る。 信長はその島津義久のかぶき振りをいたく気に入り「世はまだ下克上よの」と言って島津義久を讃えた。 しかし、信長も強かな者で筑前等に羽柴秀吉等を置いたりして九州の仕置きを終えた。 名実共に天下人となった信長は朝廷からの要請を受け、俺からの説得を受けて織田幕府を開いた。 人々はようやく終わった戦乱の世に各地で祭りを行った。
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