またな信長

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またな信長

1582年、朝鮮半島は一時の平和が訪れた。 だが、この戦いで殆んど大名達の資金が尽きて織田信忠の元に大量の借金の申し込みが来て、残ったのは僅かばかりの報奨と借金だけが殆んど大名に残った。 只野家?うちは貿易と開発が有るからな。オーストラリアまで勢力を広げて居るからガンガン開発してガンガン貿易してるぜ! その貿易での余剰金をお隣の信孝君の支援に回したりしている。 さてと現在の朝鮮半島での情勢は、明が不気味程、大人しくなって居る。 只野家との貿易で金をドンドン吐き出させて居るからだ。 塩の闇取引も会って、明は金や銀をドンドン吐き出して役人ばかりが得をする世の中になりつつある。 後はヌルハチが部族を率いてかなり暴れて居るらしい。 今、日の本は朝鮮半島での失った兵や金を回復させてる最中だ。 朝鮮王朝の軍は度々、半島の半分を治める家康を狙うが戦に長けた家康に簡単にひねり潰されて居る。 本当に野戦は上手いよな家康。 日の本は先の朝鮮半島での戦いから立ち直りつつ有るかな? そんな日々を過ごしてる俺に寝耳に水の報が入る。 『信長倒れる』だ。 直ぐに安土に登城する俺。 倒れた信長に面会する為だ。倒れたとしか聞いて無いが下手したら、折角まとまった日の本がどうなるか… 信長に面会をする俺、容態は意識不明の重体のようだ。 不味いな歴史の修正力か? まさか本能寺の変の1582年に倒れるとはな。 諸侯は集まり、さっきから黙って居る。 それだけ信長と言う存在が大きかったのだろう。 俺は黙って座って居る。ただ、ひたすらに信長の意識回復を待って居る状態だ。 「只野殿、貴殿はどうするので?」 側に座る長宗我部元親が問いかけて来る。 「どうするとは?」 俺が少し威圧を出して答える。 「いえ、野暮な事を聞いて申し訳ない」 すごすごと下がって行く。 何時しか俺の周りは誰も居なくなり、俺はただ黙って座って居る状態になった。 黙って座る事、幾つの時間が過ぎた事だろう… 「上様が目を覚まされましたっ!」 諸侯がざわざわと騒ぐ中、俺は黙って座って居たが森蘭丸が俺に近づいて来る。 「上様がお呼びです」 「あい、分かった」 俺は森蘭丸の後に続いて、信長の居る部屋へと移動する。 「来たか…熊よ…」 布団には信長が横たわって居る。 「義兄にしては珍しいですな。まさか倒れるとは」 「くっくっ…言うわ、こやつ…」 其処で信長の顔が真面目になる。 「我は…もう長くない…」 その瞳は既に生を諦めた死人、その姿であった。 「熊よ…いや義弟(おとうと)よ…信忠の事を頼む…」 「分かりました」 俺は短く答える。 「頼む…貴様が信忠の後ろに居れば…余計な事を考える者は出ぬだろう…」 既に長宗我部が動こうとした事は黙って置こう。 「義兄、信忠様の後を継ぐ者がうつけであった場合は?」 「その時は…熊の好きにせよ…」 俺は信長の手を握る。 「そうならないように、義兄は早く身体を治さないと行けませんな」 「くはは…言うわ、こやつ…」 死相…信長の顔にはっきりと浮かんで居る。 信長は長く無いだろう。 俺は義兄に頼まれた信忠を守る為に全力を尽くすのみだな。 数日後、信長はあの世へと旅立った。喪主は現将軍、信忠が努め盛大な葬式が行われた。 信長の葬式が終わり、俺と信忠君が向かい合わせで茶室に座って居る。 「叔父上、これからはこの信忠を支えて下され」 「勿論です。信忠様、寺の建立を俺に命じて下さい」 「叔父上、それは…」 俺は頭を下げてお願いする。 「どうか命じて下され」 要は他の大名を牽制する目的だ。 信長の寺を建立し、只野家の財力を減らすように見せ掛けて、他の大名からの不平不満を逸らすのが目的だ。 俺の意図に気づいたのか、信忠君は俺に言う。 「只野家に総見院の寺の建立を言い遣わす」 「はっ」 「すまない叔父上、某にもう少し力があれば…」 「上様はただ命じれば良いのです。只野家は上様に付いて行きます」 信忠君が頭を深々と下げる。 「申し訳無い叔父上…」 「まあ、あまり気を使うなよ信忠殿。信忠殿に刃を向ける奴は俺が許さん」 そう言うと信忠君の肩から力が抜ける。 「叔父上は父上の頃と変わりがないですね」 「まあ赤子の魂、百までだからな」 俺がそう言って互いに笑い合う。 「叔父上、頼りにします」 「おうよ、どんどん頼ってくれ父君にも頼まれたからな!」 こうして表向きには将軍、信忠が只野家に信長の寺の建立を命じたとして、全国の諸大名達が取り敢えずは落ち着き、幕府に借りた借金を返しながら、それぞれの領地を統治する事に専念する事になった。
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