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 帰り道のコンビニで、ちょっと高いスイーツを買った。  普段なら買わない、絶対に買わない値段のスイーツだ。もっと高級なケーキを買いに行きたかったが、ちょっと時間がなかった。  早歩きでアパートの階段を昇る。  部屋に入るとすぐにドアを閉めた。ドアにもたれたまま落ち着かない胸の鼓動を落ち着かせようと胸に手を当ててみたが、どうにも落ち着かない。  十七時まであと一分だ。  結局、私は『天才高校生作家』になることはできなかった。  大学に入って三年め。  今日は、流星文学新人賞の最終選考結果発表日だ。十七時になるとウェブ上で発表される。だいぶ出遅れてはいるけど、かつての同い年の作家・神谷悠樹に並ぶ賞の最終選考候補にまでは残っている。  受賞者の発表、その中に自分の名前があるだろうか。朝から落ち着かず、急いで帰って来た。  コンビニのスイーツは、きっと自分は受賞しているはず、そう自分を信じさせるためのものだった。  十七時になった。  スマホでウェブにアクセスすれば、すぐに結果がわかるはずだ。  でも、見るのが怖い。  急にスマホが鳴った。  心臓が飛び出そうなほどに跳ね上がり、悲鳴のような声が出そうだった。  電話だった。  私は、画面に表示された名前を見てから、電話に出た。 「もしもし」  彼は黙ったままだった。しばらくの沈黙の後に、彼が口を開いた。 「受賞オメデトウ」  棒読みだった。そんな棒読みの言葉が嬉しかった。 「ありがとう」  感謝を込めて返すと、電話の向こう側で柏木悠樹が笑う声が聞こえた。
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