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夏が来る前に書いた小説が入賞した。
『優秀賞:宇都宮真衣 白い月の夜』
グローイングアップ新人賞の優秀賞。
決して大きなコンテストではないし、大賞ではないけれど、私の名前が載ったには違いない。
「マイ、本当に入賞しちゃうなんてすごい」
休み時間に私に話しかけてきたのは、江崎沙也加だった。
「あんまり大きな声で言わないでよ。大賞だったわけじゃないんだし」
声を潜めながら私が言うと、サヤカは眉間に皺を寄せる。
「マイは、神谷悠樹を超えるぐらいにならないと満足できないの?」
神谷悠樹。
その名前に身体が一瞬震えた。
私と同じ十七歳の小説家の名前だ。十四歳でとある有名出版社の新人賞を受賞し中学生でデビュー。映画化を果たした作品もある。十代とは思えぬ表現力から新進気鋭の天才高校生作家と呼ばれている。
私が憧れていて、そして目標とする存在だ。
まぁ、あちらは売れっ子作家。こちらはちっちゃな入賞が一つ。
私は、まだまだ足元にも及ばない。
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