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*  九月のある土曜日。  私は一人でカフェに寄った。    歩き疲れたわけでも、よく冷えたアイスティーが飲みたかったわけでもない。  新しい小説を書き進めるためだった。  家ではなかなか集中できない私は、カフェで書くことが多い。  お年玉とバイトで貯めたお金で買ったノートパソコンが私のお供だ。  このお店は、初めて来る場所だった。  アイスティーとワッフルの載ったトレイを持って二階に上がる。黒と白を基調としたモダンな雰囲気で、程よく混みあっていた。  おしゃべりに励む主婦層や大きな声で笑う女子高生たちもいない、静かな雰囲気のフロアだった。 「結構、いいかも」  私は独り言をつぶやき、空いているテーブルにトレイを置き、ソファに座った。  私はアイスティーを手に取り、ストローに口をつけた。  そうして一息ついてから、私は持ってきたノートパソコンを開いた。  ウェブブラウザを開いて書き始めようとしたときだった。  私の前方に、一人の男の子が座っていることに気づいた。  短い黒髪、切れ長の目。ちょっとお洒落な感じのするマッシュヘア。あの横顔は知っている。  同じクラスの柏木くんだ。  柏木くんは何やらノートパソコンに向かってタイピングをしている。  去年と今年、同じクラスだけど、そこまで親密に話したことはない。  だから、同じカフェで気づいたからといって、声をかけるほどでもないかなと思った。私は私の執筆をしよう。    私の感情はディスプレイの向こうへと潜った。
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