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たった一度きりの青春時代を台無しにしたら一生後悔する。だから異性とは絶対付き合っておいた方が良いぞ!とお父さんは言う。確かにそうだとは思うけど、僕の周りを見ても異性と付き合っているのはほとんどいない。学年見渡してもカップルと言えるのは僕の知る限りでは3組位なものだ。みんな恥ずかしがって中々異性と付き合えるものじゃない。青春とは好きな子がいても告白できなくて悩む。話したくても話しかけられなくて悩む。付き合いたくても取っ掛かりを掴めなくて悩む。そうしたものだろう。お父さんにしたってお母さんと中学から付き合っていた訳ではないのだし、中学時代、僕と似たようなものじゃなかったのかと想像する僕にお父さんは言った。
「お父さんは中学2年から付き合ってた子がいたぞ。それがまた可愛くて見初めたんで告白したらOKだったんで付き合えた訳さ。その子とは高校に進学してからも付き合ってたんだけど、高校2年の時に他に好きな子が出来てね、これがまた可愛ったからね。それで告白したらまたOKだったんで付き合うことになったのさ、だからお父さんは可愛い子を相手に二股かけてたんだよ。どうだ、すごいだろ!」
「その二人とはいつまで付き合ってたの?」
「二兎を追う者は一兎をも得ずと言うだろ。だから高校卒業するまでに別れることになった。」
「どっちにも振られたの?」
「馬鹿言え!自分から別れたんだ。」
「何で?」
「大人になってから色んな女を知るためにさ。」
「へえ~、随分と潔いんだね。」
「ああ、お父さんは貪欲だからね。」
「じゃあ、お母さんと付き合ってた時も色んな女と付き合ってたの?」
「ああ、5人くらいかな。みんな別嬪だったよ。」
「ふ~ん、じゃあ、何でお母さんを選んだの?」
「えっ、ああ、まあ・・・」とお父さんは虚を突かれ、露骨に動揺の色を見せた。僕の質問を予期できなかった。全く杜撰なお父さん。で、苦し紛れに、「一番、優しかったからね。」
「その理由だけで別嬪をみんな振ったの?」
「いや、あと丈夫そうだったんでね。健康第一って言うだろ!」
「まあ、そうだけど、どうもお父さんの言ってることは端から可笑しいな。」
「何言ってる!」とお父さんが怒ったところで僕はその場を去った。
お母さんはどう見たって容姿が芳しくない。それは幼少の頃から思っていたことなのだ。法螺吹きもいいところだ。嘘つくならもっとましな嘘をつけ!見え透いてらあ。お父さんが持てる訳がない。こんな親を持つ僕も持てる訳がない。しかし、僕は何とかして可愛い彼女を作って自宅に招待し、お父さんをあっと言わせてやりたいという気概が生まれた。反抗期だからだろうか?否、違う。お父さんのようには絶対なりたくない、その強い気持ちが僕を奮い立たせたのだ。
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