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彼は僕が夕食を終えてダイニングから戻った時には目を覚まして上体を起こしていた。
「ありがとう。君が助けてくれたの?」と問われた僕はキューピッドに話しかけられたことで一通りでなく感激して答えた。
「そうだよ。」
「いやあ、ほんとに助かったよ。この暑さだろ。実は僕は何だか浮かれて世界中を飛び回ってたんだけど、日本に来た途端、熱中症に罹って空から落っこちてしまったんだ。」
「はあ、そうだったの・・・」
僕はキューピッドでも熱中症に罹るのかと意外に思った。余程、日本の気候が可笑しいんだな。それにしても可愛い顔をしている。赤ちゃんのようで赤ちゃんじゃない可愛らしさだ。
「もう、僕は元気になった。僕は見ての通りキューピッドだから人間より回復するのが早いんだ。」
確かにやっぱりキューピッドだ!キューピッドが存在するなら神様も存在するに違いないと僕が思っていると、キューピッドは言った。
「僕は助けてもらったお礼をしたい。何か願い事はないかい?僕に出来ることなら何でもしてあげるよ。」
そう言われて僕は真っ先に三崎希美が僕を好きになるようにして欲しいと思ったからこう言った。
「そしたら僕、今、好きな子がいるんだけど、幾らアタックしても手応えが得られないから、その子が僕を好きになるようにしてくれないかな。」
「その子はプシケーみたいに可愛いのかい?」
プシケー?あっ、ギリシャ神話のと僕は気づき、「ああ、まあね。」
「そうか、そういうことなら僕に任せてよ。正に適任だから君は大船に乗ったつもりでいればいいさ。きっと願いをかなえてあげるから。」
「それはありがたい。じゃあ、頼むよ!」
という訳で僕はこの上ない味方を得て三崎希美の写真を見せたり僕のクラスの位置を教えたりしてキューピッドと打ち合わせをして翌日の一時間目終了後の休憩時間に約束通りキューピッドに中学校に来てもらい、僕が三崎希美に話しかけている時に彼はホバリングしながら空穂から取り出した黄金の矢を番えると、三崎希美に狙いを定めて弓を引いた。そして放たれた黄金の矢は校舎のガラス窓を擦り抜けて彼女のハートを見事に射抜いたのであった。
お陰で僕は三崎希美を彼女にすることが出来て帰宅してからキューピッドに篤く礼を言ってキューピーマヨネーズをプレゼントすると、君のプシケーによろしくと言って光に包まれながら喜んで天空に帰る彼を見送った。
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