狼さん、溺愛してます

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狼さん、溺愛してます

さて、皆様初めまして、兎城豊(ウシロユタカ)と言います。 俺は今年で十七歳になる男子高校生です。 ついでに言うと十五歳になるまで実の父に会ったことは無く、初めて会った時に腹違いの兄と姉が三人いると聞かされました。 この時、一瞬頭に過ったのは俺の母親愛人だったの?と思いましたら、後妻だったようです。 ただ母の体は弱く、俺が五歳の時には儚く亡くなりました。寂しくはありません、育ての親がいましたから。 初顔合わせから数日後、今通っている学園の中等部に編入させられましたけど。嫌ってはいませんよ、相も変わらず交流はほぼありませんがね。 さて、いい加減現実逃避は止めるか。 昼飯を食べ、時間まで昼寝して起きたら、何故か美男子に押し倒されたような状態だった。 なんだろうね、これ。 両手首を抑えられ、起き上がれないように軽く体重をかけられている。 動けない、うん、どうしたものか。相手は俺をじっと見ている……なら、俺も見よう、観察だ! 目鼻立ちが凄く整ってる、イケメンだ。……やべぇ、俺の語彙力が無い!伝えきれない! イメージ的に、すっとした目に、キリッとした真っ黒な狼みたいだ! よく見ると目は深い蒼色で、とても綺麗。髪の毛なんてさらさらの艶々してるから、触ったら気持ちいいだろうな。 触らせてくれないだろうか。 男に触られるのは嫌だろうな、諦めよう。 制服のブレザーの袖口のラインが三本、先輩か。 「イケメンなおにーさん、名前は?」 「……知らないのか……?」 む?そういえばこの学校、美男美女には親衛隊なるものができやすいんだっけ? 不用意に話しかけると、すっごい睨まれて怖いんだよね。 「ありゃ、親衛隊持ちの人?」 「……いや、許可はしてないが…………聞いてないのか?」 おにーさんは最後に何かを呟いたが聞こえなかった。近くても聞こえないこともあるのねーなんて呑気に考えてた。 「大神狼治(オオカミロウジ)」 「おおかみさん!」 見た目狼、名字も狼!……は、俺も名乗らねば! 「あ、俺は「兎城豊」……え」 「知っている、有名だからな」 有名だからな、え?どゆこと?? 俺、自分で言うのもなんだけど、普通の顔よ?人に混じったら埋まるよ?親しい友人達には、キリッと真面目な顔したらそこそこに見える(笑)て言われたことはあるけど。 「中等部に編入したての頃、獅子宮茜(シシミヤアカネ)と口喧嘩のすえ掴み合い、挙げ句の果て殴り合いの大喧嘩をしただろう」 だから有名だ、と言われた。 あ、そう言えばしたな。いまだ会うたびに口喧嘩はするけど。 流石に殴り合いはしてない、てか、あいつの周りにいる人達が止めてくるし。 そう殴り合いは、してない、奇襲をかけては逃げてるからな! ーーーーー 幼い頃の話し まだ母が生きていた時に、こういう質問をされた。 『ねえ、豊……ライオンさんとオオカミさん、どっちが好き?』 『おおかみさん!』 犬派なの! 『そう……おおかみさんのどこが好き?』 『かっこいいところ!』 キリッとして格好いいよ! 『あらあら、ライオンさんも格好いいわよ?』 『え~?だって、おんなのこばっかりにかりさせてるもん。そのてん、おおかみさんはペアでするっていってた!!』 めったに狩りしに行かないってテレビでも言ってたよ! 『あら~……うふふ、どうしましょ……』 『?』 『……ふふ、気にしなくて良いのよ~?本人達に頑張ってもらいましょうかねぇ?』 クスクスと笑う母を今でも覚えている、あれはなんの意味があったんだろうか。
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