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今口に出した通り、何事においても曖昧なまま”流す”という事が出来ない義一さんらしいと思うあまりに、自然と微笑を浮かべてしまった。
「で…その質問に有希さんは何て答えたの?」
と微笑から意地悪げな笑みに変えつつ聞くと、義一は少し笑みに苦味を滲ませながら答えた。
「うん、そしたら…ふふ、彼女ったら、一瞬キョトンとしていたけれど、徐々に心外そうな不貞腐れた顔をして見せてね?『普段たまにテレビに出る時には猫を被ることもあるけど、あの番組では素で行こうと思ってるって初めの打ち合わせ段階で言ったでしょ?あなたからも気を使わなくて良いって言われてるし…ふふ、もし異論があったらズバッと言ってたよ。だから…アレは本心』とね」
「あー…ふふふ」
と、その場にいなくとも、義一と有希が話している場面は数奇屋で一度見たきりだったが、それでも今の話だけでありありと二人のやり取りする光景が浮かぶようだった。
「ふふ、これからうまくやっていけそうだね」
と初めに言った内容と同じ言葉をかけると、「うん、有希さんに引き受けてくれて有り難いと思ってるよ」とすぐに義一も同意してくれたが、「ただ…」とここで不意に留保を置いたので、「ただ?」とすかさず聞き返してしまった。
すると義一は、苦笑いがメインではあったのだが、しかしどこか企み顔…うん、何か悪戯でも考えているような、そんな表情も滲ませつつ答えた。
「琴音ちゃん、君や有希さんは同意してくれたけれど…ふふ、近々絵里と会う約束になってるんだけれどね?その時にまず初っ端に、また怒られちゃいそうだよ」
「あー…ふふふ」
と、義一の言葉から瞬時に”ある事”を思い出したあまりに笑みを零してしまった。そしてそのまま、思い出した内容を絡めて返すことにした。
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