変化 琴音編 ❶

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「あはは、そうね。…『昔から言ってるでしょー?女からすると、男が女とはこうあるべきだって言うのは毛嫌いされるって。私は別に気にしないけれど、そのうち…夜道で背中を刺されても知らないからね?』って絵里さんなら…ふふ、言いそう」 …ふふ、そう。このセリフは、二人が大学生の頃に、義一が自分を好いてくれている女の子への対応に対して、絵里が心底呆れつつ言ったものだった。 それを敢えて細かくは触れずに、ただこうしてセリフだけ抽出して言ってみたのだが、すぐに身に覚えがあるのを思い出したらしい義一は、「い、いやぁ…」と頭をポリポリと掻きつつ何だか照れた様子を見せていた。 「…あはは、確かに言われそうだよ。…今回”も”」 と、しかしこう付け加えた時には、また悪戯っぽい顔を見せていたので、反省が無いと呆れて見せつつも、それを言葉にはせずにただ笑い返すのだった。 さて、それからも暫くは昨夜観たばかりの番組についての感想を喋っていたのだが、ジュレをようやく食べ終えると、二人揃って空いた食器を持ってキッチンに向かった。二人で食器を洗った後は、紅茶のお代わりを淹れるからと言う義一をキッチンに残して、一足先に宝箱に戻った。 椅子に座り一人で静かに待っていたのだが、ふとその時、今日は何でここに来たのかを今更ながらに思い出していた。 と、思い出したそれと時を同じくして、「お待たせー」と義一が口にしながら戻ってきた。 そして、オボンからソーサーに乗った紅茶入りのカップを置いてくれた義一に対して、「ありがとう」と、自分の飲み易い位置に移動させながらお礼を返したのだが、義一が椅子に座るのを確認すると、いい頃合いだと早速問い掛けてみる事にした。
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