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「ふぅ…って、そういえばさ、昨日もメールしたように、今日はあなたが前に行っていた件で来たというのがメインなんだけれど…用件って一体何だったの?」
とカップを下ろしつつ聞くと、「え?」と直後はすぐに答えてくれなかったが、それも長くは続かず「あ、あー…ふふ、うん。アレはね…」と徐に顔を私から逸らすと、代わりに書斎机の方へと顔を向けた。
私も釣られて見てみると、やはり今年に入って以来ずっと変わらずそうなのだが、やはりその重厚感ある年季の入った机の上には、所狭しに本なり書類なりが積み重なって置かれていた。その後ろには、やはり様々な言葉で埋め尽くされたホワイトボードも健在だった。
「ちょっと待っててね?」と義一はゆっくりと椅子から腰を上げると、こっちからの返事を待たずに書斎机へと近づいて行った。
その様子を私がただ眺めている中、「えぇっと…ふふ、あった、あった」と独り言をブツブツ言いながら、どこかから物を引っ張り出すと、それを持って戻ってきた。
「ふふ、用件って程のものじゃないんだけれど…うん、前にチラッと言ったように、君には二つの件でちょっと用事があったんだ」
と言いながら椅子に腰を落とすと、「その一つ目が…ふふ、はい、これ」と義一は差し出してきた。
「え?何だろ…」と私は何も考えずにそれを受け取って見ると、それはどうやら書物らしく、新書サイズのものだった。
それは書斎机の段階でわかっていたので、すぐにその表紙を眺めて見ると、そこには『反グローバリズム論』と書かれており、その下には『望月義一』と『中山武史』とクレジットされていた。
「これって…」
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