変化 琴音編 ❶

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それは叶わずとも、それならまぁ良いかと妥協して受け入れて、なるべく早くその様子をアップするようにと頼むのだった。 その後はというと、話を元に戻してというのか、せっかく著者の一人が目の前にいるというので、若干のネタバレにもなるかもと思いつつ、早速新著である『反グローバル論』に関連した議論をしてみたいとワクワクしていたのだが、ふとここで、義一が先ほどチラッと漏らした言葉を思い出し、本当なら早く話し合いたかったのを何とか堪えつつ、目下の課題を解消する事から優先する事にした。 「ふーん…あ、ところでさ?さっき”二つの用事”があるって言ってたけれど…もう一つって一体何なの?」 「え?あ、あー…うん、それなんだ、けれど…ねぇ?」 と、途端に気まずげな苦笑いを浮かべながら絞り出すように呟くという義一の態度から、咄嗟に異変を嗅ぎ取ったのだが、ここで茶化すのは得策ではないと流石の私も学習していたので、大人しく続きを待った。 ただ視線だけ外さずにジッと見つめていたのだが、義一は根負けした風に溜息を吐くのと同時に笑みを漏らすと、「んー…ちょっと待っててね?」と義一はまた腰を上げて、スタスタとまた書斎机へと歩いて行った。 その様子をまた眺めていると、何やら机の上を探っていたが、今度はすんなり目当ての物が見つかったらしく、そのまま流れるように淀みなく椅子に座ると、間を置く事なく両手で今取ってきたばかりの物を掴んで、『ジャーン』と言わんばかりに広げてこちらに見せてきた。 んー…ふふ、実はというか、当然義一が手にした時点で、それが何なのか瞬時にわかっていたのだが、敢えて見せられたそれを眺めてみると、やはり間違いなくそれは、私が義一に預けていた大量のプリント群の一角である、詩を纏めたものだった。 「これって…私があなたに預けてた、その…」
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