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とここで一旦溜めて見せると、何となく狙ってだがニカっと目を細めながら、無邪気っぽさを意識しつつ笑うと続けて言った。
「…うん、確かに名前があった方が何かと便利だもんね。…うん、私はその名前で良いよ」
と最後に向かって、徐々に笑みを強めていきつつ話し終えると、無防備なキョトン顔を見せていた義一だったが、すぐに小さく息を鼻から出すのと同時に笑みを浮かべると、「うん、ありがとうね」とお礼を返すのだった。
「あはは。…って、あ、そうだ、話が逸れちゃったね。でね、ここからが本題中の本題だけれど、こないだ君が許可してくれた通りに…うん、実際にね、とうとうと言うかオーソドックスの面々に君の作品群を読んで貰ったんだ」
「あ…あ、あぁー…うん…」
そんな話をしたなぁ…
と、ここにきてようやく当時を、まるで他人事のように思い出していた。
…ふふ、我ながら惚けているなと思うけれど、でも事実として、今までこの話をしていたというのに、この時点まで関連して思い出せずにいたので、急な話題を提示された気になり、咄嗟には反応を返せずにいた。
だが、義一が話した事が事実なのは瞬間的にわかっていたので、それには疑いを覚えずに、狼狽ながらも肯定的な相槌を打った次第だった。
「まぁ…ふふ、君の作品群は量があったから、実は全部じゃなく三作品の中の一部ずつだけれどね」
と義一が付け加える中、私はようやく落ち着きを取り戻してきていた。
あー…ふふ、そっか。最近考える事が多かったせいで、すっかり失念していたけれど、そんな約束をしていたわねぇ…
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