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勿論、「あまり間を開けずにまたお見舞いに来るから、覚悟しておきなさいよ?」と部屋を出る間際に捨て台詞を吐くのを忘れなかったが、背後から聞こえる明るい裕美印の笑い声と、病室のドアを閉める間際に見えた、西陽からの逆光のせいで黒い影の様に見えた裕美の、こちらに手を振る姿が今も残像の様に目の裏に残るのだった。
というわけで…ふふ、今日はお見舞いに行くのは止したのだが、その私の代わりのつもりでも無いだろうが、お母さんが今頃裕美のお見舞いに行っているはずだ。
昨夜食事をしながら、お母さんから色々と細かい事を質問されて、それに対して一つ一つ答えていっていると、最後に「私は明日、裕美ちゃんのお見舞いに行くつもりだけれど、琴音、あなたはどうする?」と聞かれたので、裕美に言われた言葉を要略しながら伝えると、「あー…なら仕方ないわね」とお母さんはすんなりと納得した。
「いくら親しい人がお見舞いに来てくれても、勿論嬉しいけれど、そんな毎日の様に来られても、嬉しさは変わらずとも負担にはなるからねぇ」と続けて言われたので、「あー、そういうものなのかもね」とお母さんの言葉に私も納得がいったのだった。
既に裕美のお母さんには連絡が通っているらしく、お見舞いに行って良いか聞くと、快い返事をくれたとの事だったが、それが裕美まで話が通っているのかは微妙なところで、何もこの件についてメッセージを送っていなかったので、今頃もしかしたら軽くでも驚いているかも知れない。
…いや、もう一人、驚いていそうな人物がいる。そう、裕美が自分で話していたが、今日はヒロも裕美のお見舞いに行っているはずだからだ。
私のところにも、裕美から知らされて家に帰り、寝支度を済ませて自室に引き籠もっていた頃に、ヒロ自身から連絡を貰った。
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