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因みにキウイフルーツも一緒にボウルに入れなかったのは、キウイなどのフルーツにはゼラチンを分解するタンパク質分解酵素が含まれているためで、固まる前に入れてしまうと固まり辛くなってしまうのだ…との事だった。
ミカンなどの酸味が強い柑橘系を入れても同様らしいが、師匠が言うには「ソレは許容範囲内」との事なので、私はただ素直に従うのみだ。
さて、そこでひと段落がついた私たちは、お互いの労を労いつつ、後片付けを済ませると、紅茶を淹れてくれると言う義一をキッチンに残して、私は先に冷房の効いた宝箱へと入った。
後から義一が茶器の乗ったおぼんを持って入ってきて、お互いに持ったカップを優しくぶつけ合った後で一口飲みあい、近況報告などから雑談を始めた流れでの一番初めとなり、そして裕美の話にひと段落がついたところで、手元に置いていたタイマーが鳴ったのを合図に、私たちは一緒にキッチンへと戻った。
冷蔵庫から取り出して、キチンと程よく固まっているのを確認すると、義一が用意してくれた小振りのボウルに分け入れた後、最後にキウイフルーツを乗せて完成となったソレを、宝箱に運び入れての今だ。
正直…ふふ、手抜きのスイーツではあるのだが、どこまで本気なのか…うん、この手の事には疎い義一だから本心かも知れない、美味しいと言ってくれるのを聞いて、こんな誰でも作れる様なものでも、そう言ってくれるのは勿論嬉しかった私だったが、「あ、そう?それは良かったわ」と澄ましげに返しつつ、表情が緩むのを気にしながら、口に含むたびに柑橘系特有の、今の様な夏場にはもってこいな爽やかな涼やかさを味わっていた。
「あ、そういえばさぁ…」
と私はスプーンを咥えながら口を開いた。
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