prologue 魔王降臨

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prologue 魔王降臨

「段十郎、空駆ける天馬如きそなたに 御飛の名を遣わす」 源義経 公より御飛(おとび)の名を授かった青年がいた。御飛段十郎(おとびだんじゅうろう)。稀に生まれる神力持ちであり、その力をかられ源家に召使えられた過去を持つ。 火を噴く者、水へ変化する者、はたまた空を飛ぶ者。都では彼らを神力持ちと称し度々権力者たちが召使えていたが、理解なき辺境では妖などと呼ばれ嫌味嫌われていることなど珍しくなかった。 そういう段十郎も危うく村人に殺されかけ山に住み着いてからは天狗などといわれて来た。 5つの時から山に住み始め15にして都に出ることになった。 5つの童が神力があるといえ山で生きられたのも山には迫害され逃げて来た神力持ちのコミュニティが偶々近くにあったからに過ぎない。 神力の使い方を学び無事元服を迎えた段十郎は神力を使い麓の村に降りては人を攫い引き換えに金銀や食料を巻き上げていた。 そんなことをしている者だから平家打倒を目指し名声を集めていた源頼朝の耳に天狗の噂が入り彼が15の時、山へ軍を率いて鬼退治に来たのだ。 段十郎が見たこともない数の人間たちが武器を持ってきて山に立ち入って来たのを見て一目散に空へ逃げたのに気付き、矢の届かぬような場所に逃げられては叶わぬと帰っていった。 自分を討伐しに来たにもかかわらず何か惹かれるものを感じた彼はこっそり後ろをつけて追いかけた。 怪我をすればこっそり薬草を置いて行き、彼らが道に迷へば、近隣から人をさらって道案内をさせ、橋が流されていれば大岩を落として橋を作った。 最初はなんだか運がいいと思っていた源義経もこうまでされたら段十郎の存在に気づく。 神力持ちを大量に保持する平家に対抗するためにも天狗をこちらに引き込むべきてはないか? そう考えた源義経により冒頭の話へ繋がる。 父、源義朝ならば天狗と安直に名付けたであろうが……そう前置きを置いて空駆ける天馬如き其方に"御飛"の名を遣わす。と段十郎に名を与えた。 空を飛ぶ力を生かして戦では伝令と偵察を任され今まで頓着状態だった戦いで源家を優位に進めた。 寿永4年3月24日には平家を滅亡間近まで追い詰めこの長き戦いに終止符を打とうとしていた。 <prologue 魔王降臨> その日、世界に魔王が生まれた。 かつて栄華を誇り"平氏にあらずんば、人にあらず"などと言っていた頃はもうなない。 寿永4年3月24日壇ノ浦の戦いで平家は滅亡し、源氏が勝利を収めた。 鎌倉幕府時代にはモンゴル帝国という大国の軍勢を風の神力持ちたちが嵐を起こして船を沈めて撃退し、室町時代に入ると戦は少なくなったが戦国時代には再び長き戦乱の時代に突入し、兵士、鉄砲、神力持ち、全てを投じて戦ったことにより神力持ちは数を減らして行った。 江戸時代にもなると徳川家による神力持ち狩りが行われ、再び彼らは妖として討伐されていった。 江戸中期には神力持ちの家系は途絶えその後、神力持ちだとわかるようなほど力をもつものは二度と現れなかった。 西洋の異端者、魔女、キリスト教の悪魔、東洋の妖、そう言って神力持ちは排除されていった。 平家は滅び、神力持ちも滅んだ。 だが源家の血は脈々と受け継がれている。 平家は平の名を捨て山や辺境に隠れてるように住むしかなかった。 21世紀現代でもそれは変わらない。 地方では平家の血を継いでいるものとは結婚してはならないと差別を受ける。 世界からは差別がなくなろうとしているのに、平家は未だに差別を受けていた。 超能力"時間改変" 死して尚、天に昇ることなく地上に縛り付けられて怨霊と化していた平清盛の神力が力を発揮した。 1000年余りの間蓄積された怨念が強大すぎる超能力の発動条件を満たしたのだ。 故に世界は巻き戻る。 不必要なものは排除され、都合の悪いものは置き換わる。 寿永4年3月24日壇ノ浦の戦いで源氏は敗北し平家が勝利を収めた。 改変前の記憶を持って現世へ復活した平清盛率いる平氏の軍勢により今までの勢いは嘘のように源氏は追い詰められて行った。そこには神力持ちの姿形もなくただただ笑みを浮かべ不敵に笑う魔王の姿がいるだけであった。
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